立山黒部アルペンルート

立山黒部アルペンきっぷを使って

旅行記

2日目の続き

ホテル立山

• 恐ろしい疲弊を癒して
屋内へ入ってしばらくたった今、ようやく自分の靴の中がひどく濡れていて、 お尻も濡れそぼっていることに気がついた。今までは気温が低すぎて 気づかなかったのだ。濡れたズボンをはいているだけで寒く感じるので さっさと脱いで寝巻きに着替えた。 ズボンは一本しかもって着ていなかったため、夕食時までに乾く か気を揉むことになってしまった。

冷たさと疲労で足ががくがく震えている。それでもベッドに横たわっているより、 歩いて足を動かしたほうが楽に感じたのは、歩き続けたせいだろう。 簡単な湯沸かしで湯をつくり、持ってきていたポタージュの 「じっくりコトコト煮込んだスープ」の素でスープを作った。 同行者はソフトクリームを売っていた店"Cofee Shop"でおにぎりなど 何か食べるものを買いに行ってくれるとのことで部屋を出た。

ベージュ系の色でまとめられた落ち着いた室内 上の写真の右にあたる
ベッド一台とソファ 左上:室内の間口から正面を。
上:間口から右を。
左:ベッド一台とソファの方を望む。 これらは使用しなかった。

2人として予約したのだが、部屋は3,4人用で24畳ぐらいだと思う。 館内の廊下から部屋へ入る扉は機関室の扉のような味気ないものだが、 室内は写真のようにまあまあ落ち着いた雰囲気で、 ベージュ系できちんとまとめられていた。

テーブルの上のスープ 作ったスープ。体が冷えていたのですぐに飲み終えてしまった。

机やテレビのあたり 湯沸しセット
左:テレビと書斎。持って来た菓子類がすっかり並べてある。むやみに食べた。
右:湯沸しセット。粒顆状の緑茶と紅茶の素が4つずつ。ポットがないのは残念。


上の写真のようにテレビの下の小さな水屋にはグラスとカップがきちんと準備されていた。 その白いカップで緑茶もいただいた。冷蔵庫の中はすっかり空にされてある。

ユニットバスの風呂釜 備え付けのU字型ドライヤー
左:バスと洗面所。
右:備え付けのU字型ドライヤー。


風呂はユニットバスになっており、ビジネスホテル風だった。 しかし、水は玉殿湧水から引いてきているから飲むことができる。 靴の泥が落ちてもいいようにトイレットペーパーをユニットバスの床に 敷いて、備え付けのドライヤーで濡れた靴を乾かした。 よく濡れていたから乾くのに時間がかかった。 ほかに設備としては、廊下から部屋に入ってすぐ左手に立派なクローゼットがあった。 そして、窓からは堂々と立山が見えた。

窓の外の景色。暗い水色の空に立山が突き出している。 手前は玉殿湧水。午後4時ごろの立山の様子。もう人は出歩いていなかった。

同行者が買ってきたものは、「わさび」と大きく書かれたポテトチップスのような袋。 ああ、わさびチップスかと思ったら、中身はわさび味の"おかき"だった。 買ってきた本人もわさびチップスだと思って買ってきたという。 それより前に、なぜスナックなんて買ってきたの、お菓子なら持って来ていたのに、 と聞くと、なんと既にもう軽食の売店は閉められており、みやげもの屋しか 開いていなかったという。ソフトクリームを食べたのは3時半ごろ、 今は4時20分ごろ。店じまいの時間が早いように思われるが、それは最終バスの時刻 と関係があった。 大観峰行きのトロリーバスの最終時刻が16時30分、 最後の高原バスが到着する時間が16時50分(夏季は18時台のものがある)。 だから、閉めざるを得なかったのだ。バスが来なくなれば客は来ない。 それにここは標高2400mの室堂ターミナル。 私もちょっと地平と勘違いしていてここにコンビニはなく 売店はコンビニではないということを思い知らされた。 室堂ターミナルというのは不思議だ。妙な安心感をもたらしてくれる。 それは地平にいるような安心感だった。

自然の力によっては孤島と化すかもしれない、そして アルペンルート開通以前は多くの人にとって孤島であった 室堂には、このように近代的なターミナルができて、 お店では食料が手に入り、 ホテルは食料や生活物資などを確保すれば通年営業も可能なつくりだという。 ホテルには生活に必要なものがすべて運び込まれ揃っている。 砂漠の中のオアシスという感じがする。もちろん回りは砂漠などではないが。

と、いまは長々と文章を書けるが、わさびのおかきに がっくりしたあとも、足にひどい疲労が溜まっていて、 ベッドに横たわっても、ずっと足が泳ぐように動いていた。 脚の動きを止めると血が止まるような感じがした。 しかし、寒気は次第になんとか和らいだので、 館内探索をかねて飲み物を買いに部屋を出た。

ホテル内は白い壁で暗いグリーンの絨毯が敷かれている。 気品がある中にも軽妙さ感じられる。また、コンクリート打ち放し の柱は、ここが室堂ターミナルの上であることを思い出させる。

薄暗いエレベータ エレベータ前。コンクリートの柱が印象的だ。

暗い中、明かりがぽつんと灯るエレベータ横の階段 階段のようす。モスグリーンの絨毯が格調高い雰囲気を作っている。

1階に下りて、気になっていた家族風呂の施設の前まで行った。

家族風呂の扉 家族風呂前。一体これはなんなのだろう。

この先の自動販売機の集まったところでは、ご婦人連が並んで 品定めしていた。カップラーメンの自動販売機もあった。 私もここで飲み物を買った。

薄緑のランプが灯る暗い大浴場 誰もいない大浴場。

明るい脱衣場の洗面所 脱衣所の洗面所。立山高原ホテルと似ている。

この日は疲れのあまり体がまったく動かず、風呂に入ることができなかった。 やはり入っておけばよかったと思う。
• 夕食

部屋へ戻って、夕食の時間6時半まで待った。 夕食の前にお菓子などを食べるのは良くないが、 今回はもう仕方なかった。 室堂ターミナルに帰ってきたときはとにかく何か食べたかったし、 食べると体が少しは温まることを本能的に理解していたようだった。 そういうわけで、特に空腹にはやきもきせず、濡れた靴やズボンを 心配していた。

6時半前に一応ちゃんとした恰好でレストラン「つるぎ」へ向かった。 どんな雰囲気か忘れていたから半ば緊張していた。 レストランを覗き見しにくい、広くない入口は、 人を中へ入ってみたい気にさせる。 席について少し見渡すと、レストランは長方形で大小のテーブルが 15,6脚ぐらいだろうか。そのうちのいくつは空きで、 コースの半ばの人や、もう終わろうとしている組もあった。 私のついているテーブルにも黒い窓を背景に蝋燭が揺らめいている。 また、随分気軽な感じのドリンク類のメニューが置いてあって、 親しみやすさがそこにはあった。なによりも、サーブしてくれた方が 穏やかな品格のある人で、それがレストランの雰囲気を司っていた。 むずかる子が一人いたが、私のイメージにはその音が含まれていない。 料理はそれほど詳しくは触れることができないが、少し紹介したい。 最初に赤ワインで煮た薄い大根の上にフォアグラを乗せた料理が運ばれてきて、 たいへんおいしかった。赤ワインで煮た大根なんてはじめてだったが、 すごい芳香といい感じの歯ごたえで、よく覚えている。 メインはヒレ肉だった。コース内の肉料理は割と小さめに なることが多いが、今回はそれより一回り半ぐらい大きかった。 噛むと質のいい繊細な繊維質を感じられる とてもおいしい肉で、きょう登ったハイマツの尾根のことなどを話しながら、 かなりゆっくり時間を掛けて食べた。 付け合せは独特で、抹茶のマッシュポテトにかりかりに揚げられた フレーク上のたまねぎがあった。抹茶のマッシュポテトは 当然色だけではなく、ちゃんと抹茶の味がする。 メインが終わって、サーブしてくれた人が、お肉はいかがてしたか、と訊かれた。 最後は立山の秋の味覚を表現したデザートで、 塩をまぶしたアーモンド、紫芋のタルトなど小さなお菓子が 一枚の皿に飾られた。素朴な香や歯ごたえを持つ木の実は秋の素材の代表格だろう。 このようなデザートも個性的だと思った。デザートはどっしりすることも多いのだが、 これはよく考えられていると思った。 レストランを出るときメニュを持って帰った。裏には話の種にと、高山植物のことなどがかかれてあった。 私たちのディナーはだいたい1時間半だった。

やはりすごくいい雰囲気だったと思う。格式一辺倒ではない調和というものを感じた。 そしてホテルマンの力量は計り知れない…。

• 夜の室堂ターミナル
ここに泊まったら、絶対したいと思っていたのが夜の室堂ターミナルがどんななのかを見ることだ。夕食後、ホテルからターミナルへ降りてみた。しかし、外へは出なかった。 今思えば出てみればよかったと思う。

夜の室堂ターミナル 立山自然保護センター方向を望む。手前のトイレの標識は手作りらしく、白い部分が凹んだりしていた。

暗がりの中の青白い看板1 軽食販売の"Coffee Shop"付近。
"Coffee Shop"は長方形のコンコースの端のうち、室堂高原出口のある方の端にある。

暗がりの中の青白い看板2 "Coffee Shop"のソフトクリームを売るカウンター。

室堂ターミナル内には緑と青の電灯式案内板がみられるが、 これらは作られた年代が違うためで、今後同じものに統一していくという。

少し明るいターミナルの真ん中部分 トロリーバスのりば付近からCoffee Shop方向を望む。ここはコンコースの真ん中あたりで、おみやげや新聞が売られていた。店は閉められている。

高原バスの緑色のバス停 高原バスのバス停の写真を撮り集めていたので撮影。室内に置くことがわかっていても作ったようだ。

明かりのついていない立山高原バス乗り場を示す緑の看板 真っ暗な中金属のパイプだけがフラッシュで光っている
高原バス乗り場付近。
左:右に折れると高原バス乗り場となる。
右:高原バス乗り場のようす。ここは明かり一つなかった。


高原バス乗り場はバスが発着すると人の往来も激しいのだが、 いまは2400m級に広がる漆黒の中で眠っている。 真っ暗な中、フラッシュを入れると金属製のパイプだけが光った。

青白い看板と暗いトロリーバス乗り場 トロリーバス乗り場。

上の写真を撮った位置から少し左に移動して撮影。高原バスを室堂で降りてターミナル内に入ると見えてくる案内板。

トロリーバス乗り場はトロリーバスの通るトンネルの明かりのおかげで、 高原バス乗り場よりも少し明るかった。 もうバスが止まっていたので、誰か人がいるのかと思った。 トロリーバス乗り場の左には(写真左)立山そばの店がある。

明かりのついていない青い看板のアップ 団体用の入口に入って。この奥ではしきりに数人のおばさんのの声と掃除中のような物音がしていた。

なお、夜の室堂ターミナルを歩いていたら、 突然、従業員専用出入口扉が開き、風呂上りのような従業員が、 「11月は暇やからなー」と扉の向こうに言い残し、 ターミナルを渡って別の扉へと消えていった。
室堂ターミナルはここに従事している方が住み込んでくれないと 運営することができないのだった。

ホテル立山の解説と気圧計 探索を終えてホテルへ。室堂ターミナルとホテル立山は5年の歳月をかけて建てられたという。これだけのものを5年で建てるのは速いと感じた。

• 就寝前に

部屋へ戻るとも午後9時前になっていた。窓の外を覗くと、 一ノ越山荘の明かりが弱々しく揺らめいている。一ノ越山荘は11月3日に 今シーズンの営業を終えるから、今年最後の明かりかもしれない。 随分半ば分厚い雲が出てきていて、明日は天気が悪そうだ。 立山も不気味に突っ立っている。静かに眠っているという雰囲気も、 堂々とした雰囲気もない。この不気味さは、きょうのような著しく雪の少ない 晴れた日も今年最後となるかもしれないことを物語っていた。

明かりを落とした部屋は極めて落ち着いた色調で、 柔らかい間接照明がところどころだけを明るく照らしている。 何度も窓の外を見て楽しんだ。何もはっきり見えなかったのだが。 ほんとうはこんな雰囲気の中、お酒を飲みたかったが、疲れのせいで何もできなかった。 夜10時過ぎには床に就いていたと思う。からだがだるくて寝入りもよくなかった。 掛け布団は薄かったが、建物の設計が良いことと、暖房が適切なので寒く感じなかった。
夜は異様に静かで、こんなところでひどい事件がおきたらどうなるのだろうと考えたりした。

3日目

黒部平へ

朝起きていちばんに窓の外を見るとこれだ。

猛吹雪の室堂平

すごく吹雪いている。でも、晴れた立山を十分楽しんだからいいかな、 と思った。しかし大観峰や黒部ダムを楽しむ計画はこれで白紙になった。 一杯お茶を飲んで、身支度を整えて7時に食堂へ。 だいたい50人ぐらいの人が食事をとっていた。 朝食はバイキングで、たまご料理4種をはじめ主に洋食が準備されていた。 烏賊の刺身が船盛で置いてあった。 ごはんもおいしいが、あたたかいパンがあったので、そちらを選択した。 コーンクリームスープを入れようとすると、ちょうどそこにきのうの ディナーのテーブルをお世話してくれた方がいて、お入れしましょうか、 と言って入れた。同じ建物で夜を過ごして、 そして今はまた泊まっている人たちのために起きて、昨晩と同じ柔和な表情を 作られていることに、人の深みを感じた。
おかわりなどして、1時間弱で部屋へ戻った。
この日は、室堂から大町へ下って、帰途へ着く予定だ。 室堂での行動は何も予定しておらず、 最も遅くホテルを出て、適当にトロリーバスに乗って、 黒部ダムを観光しても余りある時間をつぶして、 15時29分までに信濃大町駅に着けばよかった。
これだけの悪天候なので、はやくホテルを出たいとも思わなかった。 先に自宅へ送り届けてもらう荷物を作り直しながら、10時まで待った。

窓から曇りの光が差し込む客室 この日の客室。目をいためそうなきのうのあの鋭い日差しはどこへ…。

テレビのニュースなどを見ながら、ゆっくり支度を整えていると、特に退屈することもなく 10時前になったので、部屋を出てチェックアウトした。 靴もズボンもよく乾いて助かった。

廊下にあったプロの掃除用具が詰まれた大きなワゴン もう掃除も始まっているようだ。 こういう日は早く発つ客と私たちみたいな客層とに分かれるのかもしれない。 晴れた日には皆早くに外へ繰り出してしまうから。

「ティーラウンジりんどう」と青地に白抜きの電灯式看板とまったくけばけばしくないホテル立山の入り口 ホテル立山の入口。そういえばほかのホテルと違ってぎらぎらしていない。

室堂ターミナルへ下りていくと、団体客が何グループもいた。 そして、バスが着くと団体客が現れては、ホテルや吹雪の室堂平に 散らばって消えていった。 そういえばフロントの手前に、団体さんの荷物が置かれていたのを思い出した。 そして、この日は11月3日文化の日であり休日であることに気づいた。 きっと帰りは混雑するだろうと思った。 それにしてもきょう室堂に来た人たちはかわいそう過ぎる、 この日は晴れの日が多いといわれているし、それにきのうまでは すかっと晴れ渡っていたのだから。
団体を回避しようと、トロリーバスに乗るのを一本遅らせた。

緑の電灯式案内板がいくつも並ぶ高原バス乗り場 きのうの夜に撮った真っ暗な写真とは対照的な日中の高原バス乗り場。

青の電灯式看板とトロリーバスの改札口 トロリーバスの改札口。

10時15分のトロリーバスに乗るため列に並んだ。 改札の少し先は右に折れていて、そのあたりで停滞していたのだが、 一人の中年の駅員が私の前にいた2,3人の初老の男女に延々とカメラの話をしていた。 なんでも、多機能のカメラは良くないことに気づいた、 それで今はシンプルなニコンなんたらを愛用している、 これ一台でいける、というカメラの持論を 気味の悪いにこやかな表情とも、説教している表情ともとれる表情で 開陳していた。たぶん、並んでいる人の退屈をまぎらわそうとしてくれていたのだろう。 私は聞いていてなんだか息苦しかったが。

立山トロリーバスは架線から電気を得てトンネル内を走るバスで、 分類上は電車にあたるとされている。改札が始まって、列が進み始めた。 前に乗客はかなりいるようだ。 奥へ進みバス前に着くと、4台止まっていて、 3台目が立ち客の出る一歩手前、4台目はまだ誰も乗っていない という状況で、駅員は、どちらにも乗ってもかまいません、 と言いながら両手をハの字の逆に開いて案内していた。 バスが破砕帯を通過するとき、青地に雨の図案が白抜きされた細い縦長の 電灯式看板がいくつか見えた。 そのときは、バスに乗っていた子供二人がカメラでその看板を カメラに収めようとフラッシュを焚きながら努力していた。

大観峰へ着いて、案内板に従い雪の降る展望台を通った。

四角く薄く雪の積もった大観峰の展望台 大観峰の展望台。

展望はなく、完全にガスが立ち込め視界はゼロだった。 大観峰駅には、中国と韓国の団体が3つぐらい来ていた。 ガイドも客も会話が闊達だった。

学校か病院のような廊下 大観峰駅はなんとも駅らしくない。

次のロープウェイは10時50分で25分待ちだった。 団体が出たあと、軽食を売る2階売店に行くと人が2,3人いただけで、 営業はされていない。

今シーズンの営業は終了しましたとの張り紙 大観峰の売店はアルペンルート開業日からその年の10月下旬あたりまでで、 在庫がなくなり次第閉店するという。

上に4枚の大きな写真でメニューを表示したカウンター 売店のカウンター。

メニューによると、
名水コーヒー300円、ます寿し200円、おやき250円、いかだんご250円となっている。
おやきは5種類ある。

古い黒い大きな長椅子が5ぐらい見えている売店内 売店全景。今は団体のトロリーバス待ちに利用されることもある。

大観峰駅構内にはみやげ物売り場があり、ここでしか売られていない地酒を 駅員さんが大きな声で売り込んでいた。同じ階の階段近くでは おやきや団子などを売っている露店もあって、活気があった。 中国語の団体もいて人は多かった。

片方のゲートが団体用でもう一方が一般用のこじんまりした改札口 ロープウェイ乗り場の改札口。改札口上の黒地に黄色で示される案内板は室堂のトロリーバスの改札口にも使われていた。

ロープウェイの駅員さんによると、この時間帯の団体はトロリーバスを使って室堂へ行くことが多く、 ロープウェイで下るとことは少ないという。

そういうわけで、私たちが10時50分に大観峰から黒部平へ下ったロープウェイの中は 10人弱の人が乗っていただけだった。非常にひどいガスでロープウェイからは何も見えない。 車内は薄ら寒く、小さな雨粒がいちいちガラスに当たる音がなんとも寂しい。 私の隣には、スカジャンの男が連れの女性にしきりに声をかけながら 後ろの窓を振り返ったりしてガサガサしていた。 車内はおおむね黙りこくった雰囲気で殺伐とし、どの人も無関心でいるように思われた。
本当なら雄大なタンボ平が見渡せるところなのだが。 こんなふうにして、下界に帰ってゆくことになるのかと思い、意気消沈して ここで旅に対する積極性を失ってしまった。

黒部平駅に着いた。

青と緑の案内板が十字に組まれて天井に取り付けてある 黒部そば屋の前。左手に折れると黒部平園地で外へ出られる。右は乗ってきたロープウェイの乗り場へ。

ここにも団体が2,3いて、かなり混雑していた。どの団体も室堂へ向かうそうだ。 次々と室堂へ人が集まっているだろうけど、室堂はかなり吹雪いているだろう。 こういうときは、みやげもの店をぶらつくしかない。

青と緑の案内板が次々と連なる少し広いケーブルカー乗り場前 ケーブルカー乗り場前。このあたりはがらんとしている。トイレへの案内板がたくさんでている。

ケーブルカー乗り場入り口 ケーブルカー乗り場入り口。窓は頑強に作られている。

次のケーブルカーは11時10分であと10分しかなかった。まだ黒部平駅に着いて2分と経っていないので、 一本遅らせて11時30分のケーブルカーに乗ることにした。 急いで下るのはいやだったし、早くに信濃大町駅についてしまっても時間をもてあますだけだった。

少し広いフロア。左手にはケーブルカー待ち客のために黒い長椅子と自動販売機が置かれてある 通ってきた通路を振り返って。向こうが室堂・立山乗り場。

とくにみやげを買う気にもなれず、とりあえず外へ出てみた。

枯れ草枯れ木に囲まれたガス覆い雨降る砂利の広場 黒部平園地。現在は黒部平庭園と呼ばれる。いずれにせよこの風景には 似つかわしくない言葉だ。

枯れ木枯れ草、砂利広場、濃い霧、しとしとしきりに降る雨。 向こうに差されたパラソルの下には写真屋のフィルムが放置してあった。 かなりむなしくなる風景で、夏季の繁栄は嘘のよう。 夏季にはもう次々とすごい数の団体、一般の観光客、山登りする人たちなどがつめかけ 記念撮影もひっきりなしに行われて、あたりは都会と変わらぬ人ごみ、 しかし見上げれば天上の世界が頂けるという感じだろう。 いまは単なる駐車場にしか見えない。
でも折り畳み傘を持ってきてよかったと思う。こうして外へ出られたのだから。

黒く大きな「黒部平」と書かれた石碑 よくこの前で記念撮影される。

濃く重そうな霧の中ロープウェイの車体が消えて行く 撮影スポットからもご覧のとおり。吹雪の室堂へさらば。

白い巨大な石造りの建物のにあいた縦長の穴二つ ロープウェイの出て行く穴。

枯れ草と枯れ木の塊 たぶんこのあたりが「高山植物観察園」。 あの可憐な花々の庭園がこんな風になってしまうとは。 この下はタンボ平の道へとつながっている。

外をぶらぶらして、建物の入口で濡れた折り畳み傘の処理をしていると時間が来たので、 乗り場まで行ってケーブルカーに乗った。

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