福岡駅

(北陸本線・ふくおか) 2007年9月

  一緒に大学生の団体が降りた。先頭に30くらいの女性が立ち、なるべく一般客を先に通してから、窓口の脇をぞろぞろ通っていく。こんなとこで何をするんだろう。工芸で名を馳せる福岡町だから、それに基づいた観光に関する見学かとも考えた。しかし後でもう少し正確に察しが付くことになる。放置された貨物側線から駅前を覗いていると、外に出た大学生らは、嘆息していた。「どこで食べるんこれ」。また暑気にうなだれてもいた。団体行動は、協調という仕事のようでもあった。

  ホームは黒くなったレンガ積みや埃っぽい鉄骨の柱が残っているのに、駅の建物は新しかった。木材とガラスをたくさん使った、最近はやりの町自慢の駅らしいのは、すでに理解した。なのに駅舎の付いている方のホームは、影が深く落ち着き払っていて、元からこの建物であったかというぐらいに、しんなり融け込んでいる。新しいガラス戸が少しも革新しようと張り切らず、黙っていた。それほど乗り場が昔の典型で旧景を放ちやすく、また一方で駅の建物が考えられていてよくできていたのだった。このようなことは北陸らしいところだと思えた。

2・3番線ホームにて。

下り方に見た2・3番線ホーム。

どんな街だろうか。

高岡・富山方面を望む。

黒くなったレンガ積みが残る。

福岡ショッピングプラザ タピス。 この駅からではいやに印象に残る建物だが、 石動駅の駐輪所とごっちゃになる。

待合室はホームの屋根のあるところからかなり離れたところにあった。

下り方に見た2・3番線ホーム待合部。

上り方に見た3番線の様子。北陸の駅らしく工場とセットになっている。

金沢方面を望む。信号機室がきれいに塗りなおされていたのが目を引いた。

1番線らしいたたずまいがなぜか残っている。

跨線橋にて。高岡方面を望む。

金沢方面。どちらもこれといって見えるものはなかった。

駅の端の方にこんな立派な噴水のような池が。

1番線ホーム階段下り口。広告がなかなか賑やかしになっていて、 また旅情誘う。

隣の島式ホーム。

このように屋根が短い。

上り方に見た1番線のりば軒下。

2番線に入った上り列車。塗装がぼろぼろで驚いた。

構内踏切のあったと思われるあたり。

高岡方。


貨物側線跡。

 

 

駅裏の雰囲気。

えらく古そうな木造の大型倉庫がある。

この樅の木?が福岡駅裏の特徴。

先ほどのショッピングセンター。

剥がされが一部残っていた。

金沢方に俯瞰した駅構内。

駅前を垣間見る。

 

  その新しい出入口は開いていて、明るい木で作った有人改札に小学3年生ぐらいの女の子2人がなよなよ寄りかかって、「ねぇ、何してるのぉ、何してるのぉ」ときゃっきゃ笑いながら、爺さんの委託駅員に絡んでいた。しまいには「ひまなんでしょう」という台詞さえぽろりと漏れはじめる。   「ひまじゃないの」と軽い声ながら屹っと否定するのだが、哀れかなそのしつこい小学生2人には為すすべもなかった。厚い三角屋根。ガラスを妻面に嵌めた三角屋根が、昔そのままのホームに上屋突き破って青空を刺す。特急が通過する。とある駅での北陸旅だ、と、さっと思い浮かんだ。が、すぐに元通り苦しい暑さに襲われた。  「あのね。道草もいいけどお、道草もいいけど、」 とうとう駅員は顔を乗り出して「ちゃんと家に帰らないとだめ」。   ばかにされているな。こんな駅暇だと。出札は少なそうだが、中は中でやることがあるようで、ぼうっとしていることはまずないのだった。あの2人は切符を売るだけだと思っている。でも私もそう思うことにした。私も2人と同じく、こんな駅で中で何をしているのか、別に詳しく知らない。   私が改札から出ようと出入口に近づくと、一人だけ残ったその小学生が、難解の顔をこっちに見せて扉の端を持っていた。駅舎を出て駅前を歩こうとすると、ぶらぶら帰って行くその子のあとをつける形になりそうだったからなんとかずらしていたのに、何度も疑いの目で振り返っていた。「昨今のことだからああいう目は親や先生がさせているんだな…」。駅員を小ばかにしていたが、それは一方で厚く信頼していたのでもあったと思い当たると、この町に住まうその子が少しにくたらしくなった。

  ガラス張りの三角屋根が目立つ駅舎ながら、中はふんだんに使ったいい木材が明るさを放っていた。雪の日には良さそうだ。あの屋根のおかげで天井が高く、ロフトがしつらえてあった。上がると、ひっそりときれいな椅子と小卓が置いてある。こんなところで見つからないように休もうか。少し座ってみる。しかし別に待合フロアが1階にあり、戸をあけて入ると、ぎんぎんに冷房が効いていてテレビが大映しになっていた。「またこれはだいぶ張り込んだな」。例のごとく観光案内所を併設している。

出札口。左手の扉は地場産業の展示場。

上り方に見た駅舎内。

出札口から見た改札口。

楽しい階段。踊り場にて。

豪壮な造り。しかしモチーフとは言え、やはりここまで屋根を高くする必要って… 開放感で歓迎を感じた。

お二階。

展望はなく、工場。気負わず真実らしく、福岡町に来た感じがした。

一階から見上げた三角屋根。

中部の駅百選だとのこと。

駅舎の出入口。

こちら待合室。

 

観光案内所。

別の部屋の展示室。福岡町の産業の紹介の場となっている。

 

 

この町の特産物の一つの菅笠。 越中福岡の菅笠製作技術は国の重要無形民俗文化財に指定されているそうだ。

駅前の風景。

 

  外に出てしばらくしてからあの団体の降りたわけに気付いた。そこここに提灯をさげて、一つやぐらが組んである。祭りだ。駅の中の工芸品の展示場には「つくりもん祭り」の人形が飾ってあって、解説を読むと非常に個性的な祭りだとわかった。野菜など畑で採れたものを用いて像をかたどり、街中に展示するのだという。察せられるように、豊穣を祝う秋の祭事なのだった。

  しかし暑くて、真夏が完全に戻って来ている。駅から脇に入った目立たないところの噴水のように見える池がきらめいていて、思わずはあはあ近寄った。するとそこには高そうな鯉が多数うごめいているではないか。近づいて影ができると、鯉が群れをなして寄ってきて、口を出しはじめた。餌はないが、水中から出てきてやっと同じこの暑い空気を分かち合えるようだった。しかしまたこんな立派のものを作って、と思ったのだが、福岡は鯉の名産なのだという。福岡も高岡と並んで個性的なところで、何かを作るという技術に長けてきたところなのだろう。

そこはかとなく旧駅舎時代が偲ばれる。

福岡駅駅舎。

 

駅舎の金沢方にあった池。彫刻はまたもや菅笠だ。

 

池のあたりから見た駅前。一日も早く走りたい!! 新幹線の早期全線整備を!! とのこと。 擬人法がちょっと厭らしい。

駅前富山方にある貨物側線。

 

 

福梅醤油本舗。

通学生が立ち寄るのだろうか。

駅前通。

末広町の交差点。

 

石動方面。国道8号。旧規格らしく狭い。

高岡方にみた交差点。右手の建物は銀行だったかのようだ。

タクシー事務所はこんな建物が多い。

至高岡。趣深い北陸街道だった。

石動・小矢部方に見た国道8号。

かなりずれて福岡駅への案内が出ていて入ってみた。

国土交通省富山河川国道事務所らしいのだが、庭がとにかく立派思わず人目を気にした。

 

いかにも官立という感じ。

 

  その子の帰って行った駅前の道は、夏の白昼で誰も出歩いておらず、古めかしい店舗ある、少し先に旧態の国道の走る、ぱっと見るものはこれとて何気ない駅前だった。しかしどこかに人が潜んでいて、祭りの前の力が鬱勃としていそうで、風景がというより、そういうここに住まう人の技術や個性が町らしさを立てているのだろうといっそう思えた。…あの子も工芸の町という意識の元に育っていくのかしら。乗った列車は、自慢の町、というところから、私をはじき出すかのようだった。

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