船戸駅

(和歌山線・ふなと)

  昼過ぎのがらんとした名手駅から再び列車に運ばれ始めた。 私と一緒に乗ったのは3人ぐらいだった。 名手の次は粉河で、この駅を境に日中の列車本数は1時間に2本になり、 それまでの倍になる。時刻表でもきれいな30分間隔だ。 ホームのみの駅をいくつか過ぎ、 最近市制を施行した岩出市の代表駅、岩出駅に停車した。 窓からは、駅舎の入口前に駅員が立って、青い小さな盆を片手に集札をしているのが見えた。 駅舎のある駅なら、かつてはどの駅でも見られた光景だろう。 小さな駅舎のある岩出駅の、ちょっとした賑わいをあとにすると、 列車は気持ちよく鉄橋を走り、紀ノ川を渡り始める。 紀ノ川を渡り終えると、もう船戸駅だ。 岩出駅から船戸駅の営業キロは1.2kmで、和歌山線において最も駅間距離が短い。 紀ノ川の渡河はひと仕事なのだ。 かつては渡し舟で大和街道の交通を支えていたという。

  船戸駅に着き、列車が走り去っていく。 ホームが長いからなかなか構内を抜け切らない。 かつてはホームもこれだけの長さが必要だったのだろう。 降り立ったホームにある待合所はきれいに改修されていた。 待合所には国鉄駅名標の再現版と時計が掲げられ、 造りつけの長椅子はきれいな焦げ茶色に塗りなおされていて、 駅を使う人のことを考えて整備しなおされていた。 椅子がこんな風にきれいに塗りなおされていると、 誰でも抵抗なく座ることができそうだ。

長椅子の背もたれの延長となった壁に駅名標と時計が掲げられている。 2番線待合所のようす。

遠くにホームが切れたところで線路は左カーブ。カーブ脇に緑の木々が生い茂る。 2番線ホームから粉河方面を望む。

上り坂が山肌の県道に接続している。 跨線橋から駅の裏側を見て。

  跨線橋の階段を上ろうとしたとき、また同じ跨線橋か、 と思うと同時に、足にだるいのを感じた。 しかし一緒に降りたおばあさんがもう上っているのを見ると、 また新鮮な気持ちで上って行けた。

野菜畑と住宅、県道の陸橋、プラットホーム。 長い直線のホームのある駅構内とそれを跨ぐ県道の陸橋。

遠くにある低い山脈まで起伏のない町並みが続く。 駅前側を見渡して。船戸の集落、次に岩出の町並みが広がる。 突き当たりは大阪府との境になる和泉山脈。

草の土手に囲まれたアスファルトの敷地にタクシーと30台ぐらいの自転車が止まっている。 駅前を見下ろして。

  この駅の跨線橋からの眺めはちょっとばかり良かった。 街並みがさあっと広がり、構内を跨ぐ陸橋上は、 夕刻に差し掛かったためか自動車の往来が頻繁だった。 街が活きているという感じ。

左手に成長したつつじの植え込み、右手に伸び行くホームと線路内。少し遠くの高い位置に木々に囲まれた運送会社の大きな建物。 1番線から見た駅構内の風景。

ホームに建つ駅名標。 国鉄サイズの駅名標。

屋根付きだが開放式の待合所。 1番線から見た2番線待合所のようす。

白い小さな建物。窓枠は桃色。 トイレ。窓にはサッシが入らず木枠のまま。

コンクリートで段々になった斜面。 前の写真の右部分。 旧改札口前から見た駅の裏側の風景。

  駅の裏側は山肌で、そこを削って高い位置に県道が走っているが、 その県道からスイッチバックのスタイルをとった下り坂が駅の裏側まで続いている。 現在は駐車場への道として使われているようだが、 何のためにこの道が作られたのか、かつてはどのようにこの道が使われていたのか、 よくわからない。両脇に木々が植えられたその道を、犬を連れた人が通りかかっていた。

軒下の風景。白く塗られた柱が薄茶色に変色している。 旧改札口前にて。

壁になった出札口。時刻表や運賃表が掲げられている。 駅舎内にて。壁と化した出札口跡が生々しい。

台の上にちょんと載っている小さな券売機。 このタイプ券売機は故障が頻繁なので私はあまり信用していない。

大きなポスター4枚、一人掛けの椅子4連、長椅子一つの駅舎内。 待合室その1。

長椅子、汚い小さなロッカー、観葉植物、サッシでない窓。 待合室その2。

  駅舎内は和歌山線のほかの無人駅と同様、壁がとにかく汚れている。 ところが、かなり洒落たイギリス風の長椅子と観葉植物が置かれていて、 誰かが駅をきちんと管理しているのだと確信させられた。 このようなものは和歌山線のほかの無人駅にはまったくないものだ。

少し広い駅前広場からすぐ細い道が伸びている。周りは古くからの住宅地。 駅舎出口からの風景。

出入口に三角屋根の付いた白い駅舎。駅舎前に何台かの自転車、そして木々。 船戸駅駅舎その1。

アスファルトの駅前広場と横長の瓦葺の駅舎。 船戸駅駅舎その2。 左側の瓦が葺きなおされている。

  駅舎を出ると、駅の軒下で簡単な防寒をした3人の中学生が コミック雑誌と携帯型電子ゲームに夢中になっていた。 ちらっと私の姿を見たが、それきりだった。 駅を出たすぐ左脇には船戸タクシーの小さな事務所があり、 夕日を浴びた一人のおじさんが真っ黒なタクシーを一心不乱に磨いている。 私のことを特に気に留め続ける人はいない。
  駅前からはちょうど1車線の幅の道が細く伸びて、 古くからの家々が軒を連ねていた。船戸の集落だ。 しかし、なによりも駅からの道の細さに驚いた。 その道は少し向こうでT字路になって、少し広い道と接続しているようだ。

住宅が寄り添い軒を連ねる細い道。細い道ながら、両脇に白線がきちんと引かれている。 駅前から伸びる道。

細い道の先に駅舎の一部が垣間見える。 振り返って。

1.5車線の白っぽい路面の道。両脇には低い住宅が立ち並ぶ。 突き当たりのT字路の右側の風景。

標識。 県道132号線・船戸停車場線。

  T字路に出ても、さほど広い道はなく1.5車線程度だった。 その道を何台もの自動車が通り過ぎていくので、かなり窮屈だった。 すぐに駅への細い道に入り直し、静けさの集落へと入った。 少し上り加減の細い道の先に、駅舎の一部が見えていた。 船戸駅前に自動車が乗り入れることは少なさそうだ。

駅前から伸びてくる細道を見通して。 T字路から駅を見て。

  汚れた壁と朽ちた柱の駅舎内を過ぎて、 駅舎の向かいにあるホームで次の列車を待った。 待合所の椅子に座ると、ひんやり冬の冷たさが伝わってくる。 しばらくすると、おばあさんが、次に若い女性が、 跨線橋を使わず線路を跨いでホームにやって来た。 船戸駅構内の粉河側はカーブしていて、目視ができない。 やめたほうがいいに違いないが、おばあさんを見ると、 やはりあの長い階段を上り下りするのは難しいことなのだなと思わされる。
  列車がやってきた。もう夕暮れが差し迫っている。 あとひと駅だなと思った。最後の駅になるのはどの駅だろうか、 と考えながら立って車窓を眺めていた。

次に訪れた駅: 布施屋駅

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