広島駅―在来線駅舎内コンコース
(山陽本線・ひろしま) 2011年5月
地平駅ビルの広島駅改札は出口改札と入口改札に分かれている。賑やかさは圧倒的に入口改札の方。駅ビルASSEは90年代のつやのあるメタリカルな建材と大判のガラスを用いて華やかさを演出していた。
わがままおばさんのシュークリームという変わった店があります
この通路は入口改札とをつなぐ通路になります。
駅ビル地平の改札と地続きという贅沢な広島の駅前は大規模で、これからここを回るのかと思うと眩暈を覚えた。いつも見過ごすけど、もっとも旅の感覚の強まる駅という場をじっくりと視てみたい、そんな念いで駅旅をしているけど、ここはさすがにしんどい…経験上、半日は想定しないと基本的な部分すら終わらない。新潟駅の時もだいぶん大変だった…
平日だけに、祝祭的な麦秋好天には助けられた。
出口改札と入口改札をつなぐ通路にも店が並び、歓迎感や賑やかさを演出する。しかし駅の中はおおむね改装が終わっていて、販売品も洗練されていて、かつての大衆の力というものが構造にだけ残っている、そんな感じだ。
メインの入口改札は人が絶えず、コンサートホールの通路に著名な偉人の肖像画が飾られているように、吹き抜けの窓の下には広告灯が並んでかつての大衆を出迎える。商売というのは、そのほとんどが別にあってもなくてもよいものだが、そこにお金を払って求めてくる人は、たいていの場合、みな真剣だ。欲望と未来に出資する仕掛け人は、感情移入を突き放すような落ち着きと、顧客の熱い希望のはざまにいる。一見何気ない広告でも、そこに無意識にセーフティーネットの存在を見出しているのかもしれない。
かつての大衆は消え去りつつある。しかし駅前に出ると、ここではその人たちに出逢うことができた。
ライオンという飲食店が気になる
入口コンコースを過ぎても下関方にもまだ、店が繋がっている。この駅の中だけでもどれだけの店舗があるんだろう…現代のエキナカのようには整理されておらず、隙間さえあれば店が入るといった、この闇市的な造りはあまり注目されてこなかったがきっと特筆に値する形態だろう。
マクドナルドのサインが誇らしげだ。しかし昔のドラッグストアと同居していて、あくまで数ある店舗のうちの一つと言った様相を呈しようとしている。しかしハンバーガーというものをここまで売り切ったのは、考えられないことだ。
はじめて降り立つ広島駅。しかし次はいつ来るかわからない。これからその駅前をじっくり観察できるというのは、本当はとても幸運なことなのだろう。そのような時間がこの先あるかもわからず、そんな気持ちになることがあるかさえも、わからないのだから。