明峰駅
(北陸本線・めいほう) 2007年9月
ホーム端から金沢方に見た駅構内。
隣の上りホームの待合室。
結構ひどい仕打ちを受けていた。
真夏を求めての3日間の北陸旅、最初に、ここに降りた。まずはこの無人駅で、はやる気持ちを調えるつもりだった。確かにこれは望んだ夏のただ中、空の色もくっきり突き抜けているが、駅はすっかり地元の季節を謳っていて、さわやかにさびしい。自転車に跨った子供の歓声もないし、親に連れられてこれから海に行くような子も駅に来ない。さっき乗ってきた列車内も、天気は夏なのにもう地の人ばかりで、フリー切符をもって目の泳いだような旅行者が見られなかった。もう9月半ばになっていた。私は8月に出ようとして、出遅れた。
人が多いとは言うけどやはり8月にはそれだけで代えられないものがあるな、と思いながら、今様の住宅があるものの、畑や農道のある広がりの中に、下がすかすかでくっきり浮かんだホームを歩いて、何かを探していた。
ホームからわかるように、駅としては新しく駅舎はないのだが、山側の風景の広がりが気持ちよく、遠くに両白山地が同じような高さでごりごり連なっている。その季節には白山が美しいのだそうだ。夏の今は見えない。でもこれでもなかなかよかった。遠くにジャスコが霞んでいて、毎度のことながらこの辺の暮らしが勝手に想われる。なお、駅から歩くようにはなっていない距離だった。
ホームにいると特急列車が通過するため、よくメロディーが流れる。そのたびに普通列車のものかしらとちょっと待ってみる体勢になるのだが、そっけなく列車が通過して、あなたに用はない、目障りだと言われているかのようだ。
当下りホームから見える風景。学校が近い。
このホームの待合室内の様子。
券売機は向こうの待合室にはない。この駅でここだけ。
椅子もなかなかきれいで座りやすかった。
入口は引き戸になっていて、閉め切ることができる。
上りホームと山並み。
金沢方。こんなふうにこの駅はカーブしている。
裏手の通りの様子。
ホームの柵越しに見て。民家のたまに沿う、とある道。
小松・福井方面に見て。
ホーム出入口付近にあった架線柱に、方面案内が小さく出ていた。
出入口付近にて。ホームで遊ばないでくださいとのこと。
通学生と関係ありそうだ。
このあたりから裏の道に階段で降りられるようになっている。
この駅の両ホームは地下道で結ばれているが、自由通路も兼ねていて、そこには少年ぽいのに落ち着いた壁画がなされてあった。地元が頼み込んで造ってもらった駅だという解説板も複数あり、よほどらしかった。しかしさっきのホーム待合室は少しも飾らずさっぱりしていて、こんなところに、ごちゃごちゃさせず、大切な気持ちは整った形で表すというような、洗練されたような感性がこの町にはありそうだった。いずれにしても駅の威厳というのはほど遠いが、暮らしの上でとても大事な駅で、また北陸本線の多様さも窺わせて、私もこの駅を、なんだかこまごまと大事にしたくなった。海側の閑とした道沿いにすぐ中学校があり、この駅が利用されているのだろう。その道に、ホームから下りると程近いところにまとまったプランターがあり、暑いさなか地元の人がゆっくり、たっぷりと水をやっていた。そこにも、JRの協力を得てPTAが造った花壇ですと掲げられている。駅は、駅舎でも風景でもないんだなあ。
道に下りず、地下道へ。
悲願の駅だったことと、地下通路の壁画制作のおこりが書いてある。
ホームへの階段を見上げて。
地下道の白山方。向こうのホームへ行ける。
こちら海側。裏手の道を渡るように地下道が潜っている。
地下道を出ると板津中学校前に出た。遠くに地下道出入口。
道の小松方面の様子。
地下道出入口前。駅から直接学校前まで来られる。
道路から見た明峰駅。黄色い看板は運転士のためのもの。
横道にそれて。海方向に延びる道。
明峰駅入口。モザイク画が設置されている。
中学生がつくったものだが、彫刻画家に監修してもらい、
市長、教育長に目玉を、列車のヘッドライトを
駅長に入れてもらったとのこと。何の願掛けだろう。
この解説板も安いものではなさそうだった。
花壇にもこのように解説がなされてある。
待合室裏付近。精一杯の手入れがわかる。
明峰駅。
松任方に伸びる道。
小松方。
地下道を通って反対側へ。
壁画。ピクニックが描かれている。
さりげなく立っている方面案内が異様。
この場所から、金沢へでも富山へでも行けるようになった、
という感慨すら感じられた。
明峰駅。
駅前の様子。
しいんと涼しい通路をこつこつ歩いて、反対側へ。こっちが一応駅前となっているみたいで、転回場と広い駐車場があり、自動車での利便がかなり図られていた。駐輪所とトイレが木造りだが、トイレが駅舎の表象を果たしていて、最低限の複数な設備の組み合わせで、より駅を表現をしているかのようだった。でもトイレがちゃんとしているのは助かる。入ってみたが、ちょっと狭い。手洗い場も建物の真正面にあって、蛇口だった。もうそんなに新しくないのかもしれない。
向こうのホームと違い、こちらは地下道が直接ホームに
繋がっていない。
小松方面を望む。
上りホームから見た、下りホーム。
当上りホームの待合室内の様子。券売機がない以外は向こうとまったく同じ。
明峰駅名標と板津中学校。
松任・金沢方面。
両白山地とジャスコ。
上りホームから出るときによく見える跨道橋。
これはこれで風景にあっていた。下はアンダーパスのような道路になっている。
転回場の近くには建設に功のあった人名を連ねた石碑まである。請願の困難さや、開業の喜びが、この駅に降りてよくわかった。しかし壁画、モザイク画、石碑と造られた年が間をあけて違っていて、ちょっと首をひねった。いくつかの解説板の文には浄財に感謝ともあった。
それより壁画や花壇、便利に整備された何気ない転回場が、ここを大事に思っている人に親和したくならせた。石碑や壁画という手法はありきたりなのに、捨て置けないのは、やはり表現法として優れているからなのだろうか。
明峰駅の碑。
碑の裏。当駅は昭和63年にできたのだが、この碑は平成5年に建てたという。
ロータリーの様子。
墓碑銘板のようなコンクリート一枚のホームから、列車を待つ。ようやく北陸の空気に半袖の体が馴染んできた。これから金沢を越え、しばらくはゆっくりと富山西部に降りることになると思う。
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