森田駅
(北陸本線・もりた)
越中大門から上りに乗る。まだお昼の2時ごろだったが、都合上あとは帰るだけだった。虚しい気持ちで列車に乗る。途中、金沢で乗り換え。金沢はお盆土曜日とあってかなりの人出だ。各特急乗車口に列が何本もでき、椅子のあるところでは家族がべったりしていた。はてには外国人まで見かける。
それからさらに1時間半も普通列車に乗っていると、日の色が変わってきて、夕刻ころになってしまった。もう福井駅に着く。しかし、あと一本遅らせてもよさそうだったから、一つ手前の森田というところで、何の気なしに降りた。
下り乗り場にて。
運搬通路がぽっかり口を開けている。
隣のホームのこのエリアだけ松が植わっていた。
森田、春江、丸岡と、それぞれはそんなに個性的ではない地名が続くが、連続として見みると、福井近郊という感じがとてもしてくる。しかし森田って、どこにでもありそうな地名。いったい何があるというのかしら。
ホームから海側は黄昏の福井平野がどこまでも眺められた。しかし隣は県都。都市があって、集落があって、そして田んぼが広がって。そういう風景はよくあるのだが、それがそうは思えなくなったり、やはりそうだと思えたり。列車の、必死に唸る古くさいモーター音を聞きつつ、いつも汚れている窓ガラスから、森田、春江、丸岡と眺めていると、もう飽きた、面倒くさいと思う一方、盤石な風景として、安心することもある。
しかし妙な一景がある。福井方から続いている山がちょうどこの森田へんで、切れてなくなっている。越前海岸沿いの痩せた古そうな山地が、ここで尽きてしまうのだった。ここから金津まで、海側に山がなくなる。ここは福井の中でも開放的な平野のあるところなのだった。
下りホームにて金沢方を望む。
駅裏の風景。
跨線橋にて芦原温泉・金沢方面を望む。このあたりは盛り土になっていると気づく。
山はまだ遠く、福井まっただ中。
福井・敦賀方面。文殊山の山塊が横たわっている。
跨線橋内。ここの屋根はアーチではなく山型。
大野方面の様子。福井の中でも山深いところに街があるところ。
駅前が見えた。ささやか。
上りホーム階段下り口。ホーローか鉄板の方面案内が残っている。
ホームの風景。
待合室のある下りホームの様子。
この上りホームの金沢寄りには妙なデッドスペースがあった。
マンションと駅との境の様子。この間の土地の所有者は誰なのだろう。
特急通過する北陸本線の小さな駅には、
こんな駅があるよと言っているようだった。
作業用スロープを埋めたという感じ。
マンションの敷地も鉄道用地を売ったものなのだろう。
金沢方面を望む。
駅構内。
古い下りホーム越しに見る福井平野。
先ほどの階段。お洒落な街灯のある駅だった。
階段の右脇をすり抜けても向こうに行ける。
風除けが目立っていた。
夏は窓を開け、風を入れるようにする。
改札口。
こちらのは使われていなかった。この左にあった窓口脇の改札口を使う。
駅舎内から見た改札口。
待合コーナー。
天井が高めだった。
据え付けの長椅子もある。
駅舎では50くらいの女の人が申込用紙をもとに定期券を作ったりしていて、客には関心がなかった。駅員ではなく、このへんの人らしい。中はよく考えると天井高く、広くて、もう建て替わってしまった地位の高い駅の木造駅舎というのはこんなんだったのかなと思ったりした。短い階段を下りて外へ出て、森田という町の空気に触れる。近くの案内板に、森田 - 川と緑の町、とあり、ちょっと笑ってしまった。川と緑って…。森田の端に九頭竜川があるので、その渡河のために宿場ができたのかもしれない。福井市内だが市街外縁ではなく、そこそこは独立性のあるところなのかなと思った。丸岡なんかはすっかり独立したところらしいが。
駅前の様子。
森田駅駅舎その1.
トイレと荷物搬入通路。
案内地図。
駐輪場。
周辺で最も目立つもの。
駅前商店。
街路樹通りの伸びる何ともない駅前で困ったが、駅舎が思いがけずしゃれていて感心した。だって福井にあって、こんなものは珍しい、と思える。駅は改造においてはそれぞれの道を歩むが、ここはこんな改装の方針を取ったんだ。でも桃色の壁にタイル貼った階段は、周りを差し置いて、ひとりだけで洋館風になってしまっていた。けれども閉鎖された荷物運搬通路や、改札の使われない柵ラッチは隠せない。そうして影で国鉄線の駅としてのまっとうな歴史を語っていた。隠せない。洋風の化粧直しと、古くささと、福井の平野、それらが混淆し、今は市井の人々の輸送だけを担う厚化粧の森田駅の印象ができてきた。
あ、そういえば桃色タイルの南条駅。街路樹の駅前や、軽く見せかけた外観、影で語る歴史。活気は断然森田の方があるけど。
駐車場から見た駅前の様子。
福井方向に伸びていた道。あたりの家では車庫取りに苦労している様子。
駅前通り。すがすがしい雰囲気。
駅舎その2.
その3.
夕刻で地元の人が見られるはずなのに、ほとんどいない。お盆休みだから仕方ないか。代わりに駅あたりで30くらいの男女一組が、話ししたり写真を撮ったりして歩き、列車で去っていった。あの人たちも下車旅の最中だったのだろうか。また、若い二人の女性もいた。福井あたりで今まで若い女性を見て、派手好みなのかと思っていもした。
いつもの傷んだ旧急行車に乗り、福井駅へと向かう。列車に乗り込んではじめに聞く放送が、「次は福井、福井です」。そういうのは初めてだった。福井って隣は県都じゃないか。とぼけたみたいに、「森田と福井は隣同士だったのか」。
九頭竜川を渡る。いつもと違っていやに雄大な川として映った。こうやって下車して乗車すると、乗り通したときと違って、車窓が凝縮されるのだった。隣どうしでも、だんだん近郊としてひとまとめにしにくくなった。森田に帰る、という意味が夕刻の中で深まった。列車は福井市街に近づく。森田もまたほかと替えることができず、そこに個性を感じる人がいるのが、見えてくるようだった。
北陸3 : おわり
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