沢谷駅―朝の沢谷駅
(三江線・さわだに) 2011年7月
寝苦しい夜を抜け出た朝4時半、また今日も晴天になりそうな青らんだ空を確認して、シュラフを片付けた。このまま行くともっと涼しくなるはずなのだが、朝5時を過ぎるともうだいぶ明るくなるで、そっからまた昇温がはじまる。
まだ日の出はしてないけど、朝の光がほどほどに回るようになった五時半、きのう気になっていた寺のある駅裏に行ってみよう、と。残り30分しかないから、早足である。で、ふとホームから県道側を見ると、なんとこっちにも寺があるではないか。昨日は全然気づかなかった。こっちはなかなか立派な寺院だ。法光寺というのだという。同じ石州瓦のせいで、民家に隠れて気づかなかった。






鋭鋒が気になります

もう別に大したことはないだろう、と、不気味でもなくなったトンネルをくぐる。きのう行きそびれた駅裏だ。そこは表と打って変わって静まり返り、水田と民家の桃源郷だった。川は清く、山は朝日に霞み… 鉄道の築堤がこうした隔絶した空気感を作ったのだろう。




右手は鉄道の築堤



山はかなり植林されてるいのがわかります

散策していると熊見横穴群と書かれた風情のある案内板が。ほんの近くにあったらて見てみたいと思ったが、結局どこにあるかわからなかった。まぁ思い付きで行ってわかるようなものでもなかろう。要は昔のお墓と推定されている遺構だ。ちなみにこの近くには鈩谷(たたらだに)という地名があり、製鉄も盛んだった模様。中国山地ではどこもそうだったのだろう。
にしても熊見って…今も棲息している方が、この複雑な山地の山深さに説得力を増すかもしれない。

昨日寝ようかと思っていた寺の前まで来た。こちらは西蓮寺という。ほんと鐘楼の基礎のところででも寝たら涼しかったろうに…あるいは本堂の廊下とか…まぁでも、それじゃ駅寝じゃなくなっちゃうな。ほんと放浪旅という感じだ。

(島根県邑智郡美郷町熊見92番地 浄土真宗本願寺派 西蓮寺)



なんか幼年期的特質を持ってますね
右手の側溝は水を引くためのものでしょう


駅へと戻る。にしても太陽は姿を現していないのにあたりは随分と明るいもんだなと。けれど山の上の方はもう日の出を拝んでいるわけだ。
僕はここが日光で充たされる前に去るだろう。
駅は予定の中で忙しく立ち離れるに限る。場所を占拠しづけないというのも、僕が気を付けている点である。






(島根県邑智郡美郷町石原99番地 浄土真宗本願寺派 法光寺)
列車は定刻通り到着。日陰に入るとちょっと肌寒い感じもしたが、なーに、どうせイヤというほど暑くなるんだ。気にしない気にしない。
今朝は沢谷から宇津井までの、きのうカッ飛ばした区間を攻める。石見都賀、石見松原、潮だ。いずれもなんとなく謎が多くてちょっと楽しみな駅である。


