新山口駅
(山陽本線・しんやまぐち) 2011年5月
多くの山陽線の列車の終着となっている、新山口。2003年に小郡駅から改称したが、新山口の名はすっかり定着したものになっている気がする。それは今も現役で走る旧式の電車がこぞって行先幕に「新山口」を掲げているせいだ。まるで昭和時代からその名があったかのようである。
東から来ると、もうそろそろ山口も終りかなと思うが、あと約三分の一も残っているという始末。まだまだこの工業と内海の、古式ゆかしい國を楽しめるというわけだ。
いずれにせよ、広大な構内を持つが、駅も周辺も都市化しすぎていない。旅行中休憩するにあたってはなかなか落ち着ける駅なので、割と気に入っているしだい。
6・7番線(広島寄り)
広島側には水色の陸橋がある。いくつもの線路はこれ越えて遠くぐーんとカーブして伸びゆくのだが、この眺めを見るといつも「新山口に来たなぁ」と思う。何か安心する風景だ。そして端の方ではいつも誰かタバコをのんでいる。ホームは長く、構内は開放的で、気兼ねしなくて済みそうである。
なんとなし新山口らしい
6・7番線ホームからは、小さな宇部線ホームと構内庭が見て取れる。昔の大きな駅にはよくある、線路と線路に挟まれた庭だ。まだ文化的な意識と余裕があった時代だろう。あの短い編成で宇部線、小野田線を駅旅をしたいとずっと思っている。山口の臨海部、山陽小野田と明るく名乗るそこは、どんな小駅があり、小町が展開しているのだろう。短編がまた進みそうである。
6・7番線(下関寄り)
各ホームの下関寄りは余り活用されないエリアだ。風景としてもなんとなし締まりがなく、広大な緑の敷地も見て取れる。駅建て替えの際に活用されるのかと思うと、美しいアスファルト舗装やコンクリートでカチカチに固まった土地が思い浮かんだ。
大きな駅にはつきものですね
跨線橋1
4・5番線(広島寄り)
4・5番線ホームは山陽上りホームだが、なんとなし自分は印象がない…やはりホームとホームに挟まれていると、なんなとし景色も狭まってしまう。
4・5番線(下関寄り)
跨線橋
新幹線コンコース
意外にも新幹線コンコースは徳山よりも狭く、簡素なものだった。幹在共有の改札の"詰所"は、なんだかタダのインフォメーション・カウンターのようで、落ち着かなさそう。駅員からの評判もイマイチ? なのを想像した。
九州新幹線が開通して間もないので、そのモケットが置いてあり、座って遊んでみたりした。関西から九州は、自分としては夜間移動で訪れるところという認識かな。だからバスをよく使っていた。朝一で着く九州はほんと気持ちいいものだ。最近はそういう感性もなくなってきたようである。
ここ新山口からは、鹿児島まで2時間ちょっとになったとのことで、それはそれでだいぶ画期的なことなのだろう。
8番線(宇部線ホーム)
宇部線ホームは少し離れている感じがする。それでも列車発着時はいつも人がたくさんいる印象だ。きっと人の多く住んでいる地域を通っているのだろう、そんなことを想う。臨海部の山口らしい山口を訪れるには、これに乗るしかないだろう。
跨線橋3
2・3番線
2・3番線ホームは栄誉ある駅舎付き1番線ホームからの熱い視線を浴びるホームだが、それはどこも同じ。けれど、ここはほかのホームが多いだけになおさらそれを実感するのだ。山口線ホームであり、ここは山口の古式ゆかしい老夫婦たちが汽車を待ちわび、そしてつつましく乗り込んで、山口線を山口駅までゆかれる、そんなホームなのだ。
山口市街にお住いの人は、ここ新山口まで帰ってくると、もう家に帰ったも同然、そんな気持ちになるのが僕には推し量られた。だって後はあの逞しい気動車が山口市街まで連れて行ってくれるのだもの。
向かいの1番線ホームでいつもその気動車を見守っている駅員もなんだか嬉しそうである。なんかこんなふうに、県都が本線上にはなく、こうしてワンポイント置いて、ちょっと奥まったところにあるのは本当にいい感じだ。
日本の都市はあまりにも本線病に取りつかれている。まことに嘆かわしいことだ。
跨線橋・1番線降り口
1番線
1番線はSLやまぐち号が発着するので、レトロ様式に改装してあった。赤茶けたレンガのシートを壁に貼ったり、ゴミ箱を木材で覆ったり…やはり維新ゆかりの地とあって、近代化の象徴は見逃せないところだろう。
駅舎内
こんな大きな駅なのに改札が2レーンしかないということに驚きつつ、改札を出た。もちろん自動改札はない。なんとも味わい深いではないか…
駅舎は開放型で、外と隔てる扉や壁はない。
駅舎内にいてると、喪服をつけた老夫婦が礼を言われながらタクシーから出て、入って来た。駅にいる人はみなきちんとしていて、体面や切りを重んじるといった風に見えた。思わぬ情勢の変化に抗いながらも、きちんと正しく生きてきた人が多いのかもしれない。けれど、山口の知り合いはよく言っていた。階級や所属がものをいうから、くれぐれも注意した方がよい、と…
僕はたぶん生きて行けないだろう。
節電でうす暗い駅舎内から外に出て、駅旅をはじめた。基本的には乗換駅なのか、駅前は賑やかすぎなくてほっとした。人はあまり歩いておらず、遠くまきに予備校やビジネスホテルが見えた。でもこれは小郡という独立した町域なのだ。名前をなくしたくなかったその気持ちが分かった気がした。