高水駅
(岩徳線・たかみず) 2011年5月
少ししか眠れなかったが、朝起きたところが岩徳線のとある駅という、ほとんどないような状況に貴慮はみなぎり、今旅行4回目の駅寝にもかかわらず、朝は元気だった。
ツルが飛来するという。そして高水という地名からは水のきれいなのが連想され、初夏ということもあり、なんとなし北海道を連想したが、町や駅、そして周囲の山がちな感じからは、九州のような感じがした。
裏手には二車線の道路が通っていたが、帰ってから調べて驚いた。国道2号だという。というのも、夜間はほとんど往来がなかったのだ。やはり海沿いか、山陽自動車道を使っているのだろう。
しかし夜が明けるにつれ、トラックやダンプの悲しげな走行音が、こだまするようになった。
初夏だけど、朝方は震えるくらいの寒さ。けれどじきに暑くなるのが容易に予想された。
まだ電気の灯る無人駅を探索する。明るくなって初めて見る駅だ。そこかしこにツルのオブジェがあるが、もうだいぶ傷んでいて、本州唯一の飛来地としてのを馳せたのはだいぶ昔のことのようだった。もちろん現在でもツルは飛来しているが、毎年数羽から十数羽だという。家族単位といったところだろう。日本では世界的な飛来地があり、それは九州の出水だ。数万羽といい、どうもツルも"一極集中"がトレンドのようである。しかし感染症が蔓延すると被害が甚大になるため、なるべく分散化させた方がいいのだそうだ。となると、ちょこちよこ各地に飛来しているツルたちは、危機回避能力が発達している?のだろうか。
駅の周囲の様子は跨線橋から一発でつかめた。いろんな山に囲まれた、やはり水のきれいそうな静かなエリアのようだ。こういうところはだいたい治安がいい。電気は消えていたけど、夜間ずっとタクシーの人が事務所に常駐していたらしいのも割と頼もしい。
ホームの鶴のオブジェももうボロボロだったので、ツルが飛来したのは昔のことなのだろう、と、このときは思っていた。しかし駅前はツルづくしである。そもそも呼鶴温泉というのがすぐ近くにあるし、呼鶴タクシー、ツルの里、など、どうもツルはまだ飛来するんかなぁと思い直したけど、交通の便が発達した現代ではやはり北海道にタンチョウでも見に行ってしまうのだろう、と片付けてしまう。けれど後日調べると、地元の方々は大変な努力をされているようで、今では減ってしまった飛来数回復を祈念するばかりだ。ちなみにここ山口県周南市八代(やしろ)や九州の出水に飛来するのはナベツルである。
概観はきれいに整ってます
静かで落ち着いた一帯にふさわしい、つつましやかな木造駅舎を見送りつつ、朝の散歩。高水駅、の浮き出した字体が誇らしげではないか。ちなこに駅周辺にはコンビニのようなものはない。
黄色いガードレールは山口!
駅に帰り着いて、始発の時間を確認する。すべて予定通りの機械的な駅への来訪だけど、自分にはどの駅も新鮮だった。だって写真を見ることはあり得ても、実際に下車するというのは、それだけでほとんどないことで、貴重な体験になるのだ。駅旅とは、そういうことの連続である。
結局、徳山方面行の始発には自分だけが乗ることになった。もうこの辺は徳山商圏だ思うんだけどなぁ…