余呉駅
余呉駅の風景
2006年の初夏、余呉駅に降り立った。 ものすごく蒸し暑い日だった。 余呉駅独特の、上屋のない幅広いホームを楽しみにしていたが、 ちょうど上屋建設の工事をしていたところだった。 ホームは汚れ、駅名標も灰色のネットに囲われた中にあり、見ることができなかった。 とても残念だったが、代わりに余呉湖まで歩いて、湖を見て楽しもうと思った。
木之本側のホームの端から見た駅舎。
上と同じ位置から近江塩津方面の風景。
ごらんのように上屋を建設のための工事が派手になされている。 ここ余呉は有名な豪雪地帯。きっと、相当丈夫な上屋が造られるのだろう。 ところで、上屋のない幅広いホームに立っているコンクリートの柱には 電照式番線案内が取り付けられている。 このあたりの夜はさぞかし暗いだろうけど、そんな暗闇にぼんやり浮かぶ この番線案内はどんな雰囲気をかもし出すのだろうか。
電照式番線案内。
ホームを近江塩津側に歩き進めると、 ホームのアスファルトに出口を案内する白いペイントがなされているのをいくつか見つけた。
上屋があれば、その屋根の下に黄色の出口案内を吊り下げるのだろうけど、 上屋はないため、ホームの床面に直接書かれているのだろう。
ホームをぶらついていると、突然、 半袖のカッターシャツと黒の長ズボンの高校生が線路脇から ホームに飛び移ってきた。しかし瞬く間に姿を見失ってしまった。 高さのある灰色のネットにじゃまされてホームを見渡せなかったためだ。 彼が飛び乗ってきた線路脇を見ると、一台の自転車が草の茂る土手に投げられてあった。 しばらくしてしらさぎが通過すると、彼はホームへ登ってきた線路脇に再び飛び降り、 倒してあった自転車に跨ってどこかへ去った。 作業員がずっと見ていたが、まったくのお構いなしであった。 しかし、一体あれは何だったのだろうかと思う。 列車を携帯電話のカメラで撮影しに来たのだろうか。 作業員と灰色のネットが幅を利かすホームで目当ての駅名標を探したが、 どうやら工事のための灰色のネットの囲いの中にあるようで見られなかった。
それにしても、落ち着くことができない。作業員がしばしば出入りするし、 どうやら上屋の柱を埋め込む穴を掘っているようで、ものすごい音がしていた。 とりあえず、近江塩津側のホームの端まで歩いて、静けさの中、余呉湖を眺めることにした。
ホームを歩いていくと、アスファルトの舗装は途中でぷつんと終わり、 その先はホームの内のりだけが舗装されて、 残りの部分には草草の茂っているホームが続いていた。
アスファルト舗装の終わり。
未舗装のホーム。
ようやくホームの端までやって来た。ゆっくり歩いて4分。
ホーム終端旅情。近江塩津方面を望む。
ホーム終端付近からの風景。
振り返ってホームを見渡す。
振り返ると右が敦賀・福井方面へ向かう1番線で、左が長浜・米原方面へ向かう2番線。 しかし、ホームの端に来て左手を見ると線路がない。 遠くに目を凝らすと、2番線は、 アスファルトの舗装が終わる前にホームを切り欠いたようになっている。 一線分ホームが伸ばされたため、このような形になり、 ホームの幅が広くなっていたのだという。
余呉駅のホームは周囲を完全に田んぼによって囲まれ、さらに山地によって囲まれて、 広々としたとても静かなホームだった。 ホームの端から余呉湖を見渡そうと思ったが、 駅舎に近いところからのほうがよく見えるようである。 蒸し暑い中、また長いホームを歩いて駅舎まで戻った。
ホームの駅舎に近い所から見た余呉湖の風景。
ところで、余呉駅はホームも特異だが、 ホームと駅舎をつなぐ通路の付け方もまた、少し風変わりな気がする。
ホームからスロープを降りて、振り返って撮影。
駅舎へ向かう通路。
踏切から木之本方面を望む。
駅舎へ。
駅舎内?
左手の扉を出ると、先ほど渡ってきた踏切に出る。
駅舎内?
右手の扉を出ると駅前へ。
構内から駅舎に入って右側のようす。 右端に写っているのはコインロッカー。
コインロッカーと構内への扉。
2つ上の写真の左上に売っているパネル写真。 「余呉湖は琵琶湖より49m高い」と書かれている。
駅舎内には明るい色の貴重な天然木の長椅子が置かれ、 観光客のためにコインロッカーが置かれてあった。 また、持ち帰り自由な多種多様なパンフレットが陳列され、 パネル写真やポスターが多数掲示され、とても賑やかな雰囲気だった。 きっぷの販売業務はおばさん一人でなされていたが、 集札業務はしていなかった。 天井は蛍光灯と電球を用いる照明が設けられ、 蛍光灯カバーには桟がはめ込まれ、全体的にデザインが凝らされており、 駅舎内の単調さを取り除いていた。 また、余呉駅駅舎内には余呉町観光案内所が併設され、 レンタサイクリングの貸し出しなども行っているようだ。
駅舎を出ると、左手には少し広いアスファルトの敷地、 正面には融雪装置のついた道が延び、 右手には狭い敷地に大木が何本か植わっていた。
駅前の風景。
上の写真の看板群。観光に力を入れているようだ。
駅から出て左にある敷地に入り、駅舎の左手に回りこむとかなり広い駐輪所があった。 多くの自転車がとめられているが、すべて駅利用者のものだろう。
駐輪所。貸し出し用自転車を除くと、自転車は80台ぐらい。
「地域の夢琵琶湖環状線実現のために JR北陸本線に乗りましょう」 駐輪所右脇にあった。
駅庭と駅舎。
駅から出てすぐ右に樹木の何本か植わった小さなエリアがあるが、 これはおそらく一世代前の駅舎と共に作られた駅庭だろう。 コンクリートの駅舎のある駅にはこんなふうにかつての駅庭が残されていることがとても多い。
余呉駅。
余呉駅入口。間口の上の天然木の駅看板が、駅舎に少し重みを与えている。
駅庭付近から見た駅舎。
駅舎正面から見て左手のようす。この左あたりから高校生はホームに飛び移ってきた。
余呉駅駅舎。
余呉駅に来たら、そのときは必ず余呉湖を訪れようと思っていた。 駅から近いし、名前ばかり聞いてまだ見たことがなかったから。 さあ、神秘的といわれる余呉湖へ。
余呉湖
駅を出ると消雪装置つきの道が伸びてより広い道路にT字路でつながる。 余呉湖を間近に見るにはそのT字路を左に折れ、さらに右に折れればいい。
T字路にある余呉駅への案内板。
電柱の上にある街灯の飾りの雪だるま。
湖国バスの「余呉駅」のバス停。 湖北地域の駅を訪れると駅前で必ず見かける。
ところでこのあたりの道路事情には少しおもしろいものがあるので詳解したい。 まず、余呉駅を出てまっすぐに伸びる、今歩いてきた道はほぼ南を指している。 ゆえにT字路の左はほぼ東で、右は西に向かうはずだ。 T字路をでて右の道を眺めてみると、まっすぐな気持ちのいい道路で、 その道を進めば、感覚的に、近江塩津駅のある西浅井町に出られると考える人がいても不思議ではない。 しかし、そこに大きな罠があって、 その道を進み続けても、そのT字路付近の土地に戻ってきてしまうのである。 というのは、その道は余呉湖外周道路。 山肌にぶつかることで西進をやめ、余呉湖をぐるっと周って回帰してしまうのだ。 勘違いする人が多いのだろう、T字路付近には、 その道を進んでも西浅井町には出られない、という警告看板があった。
T字路の右手の道。
なお、この道路事情は意外と重要事項である。 というのは、もしその道が余呉湖を外周せず、直進し、山を抜けていれば、現在の北陸本線と並行することになり、 自然と塩津街道(8)に接続する。そうなると、北国街道(365)と塩津街道(8)の交点である木之本よりも北に、 二つの街道をショートカットするように道ができることになる。 そうなっていたら、余呉はどんな町になっていただろうか。それほど変わらなかっただろうか。
T字路の右手の道を少し進んだところから東を望む。 看板の指示通り左に折れれば余呉駅に入る。
ところで、私も少し迷ってしまって、余呉湖畔に出るにあたってT字路の右の道を進んでしまった。 元に戻ってT字路を越えると、右手に余呉川管理事務所があった。
余呉川管理事務所。
すぐ近くにあった標語。水色が印象的だ。
余呉川管理事務所が見えたら右折。 なんとなく湖畔が近い予感。
案内板。
近くにあった案内板の柱には「中部北陸自然歩道」とあり、一瞬、えっ、と思った。 普段は「東海自然歩道」という表示を見慣れていたし、 ここ余呉がもう中部北陸になるとは考えていなかったためだった。
右折後の道。
右折したら、右に川を見ながら余呉湖畔に突き進む。左手には観光施設があり、 観光地の雰囲気があった。
余呉川管理事務所のパラボナアンテナ。
余呉湖観光館。
余呉湖観光館の正面。
道別れ。左に進むと余呉湖の外周道路。直進すると余呉湖畔、余呉導水の河口。
ここにも中部北陸自然歩道の標柱。
賤ヶ岳古戦場の図。旅情誘う、独特の筆致。 下の方では山が反対を向いている。
古戦場の図の左手に広がる砂利のスペース。 それにしても観光案内図が多い。
観光案内図の一つと「平成4年度電源立地促進対策交付金施設」と書かれた表示板。 この交付金は、原電のある市町村のまわりの市町村に交付される。
余呉湖。
神秘の湖と呼ばれる余呉湖。平均標高は132m。 深い緑の山々に囲まれて、静かに水をたたえていた。 太陽が雲に隠されているだけましだったが、 じっとりと蒸し暑いため、水の生臭さが漂っていた。 これは、夏ならどの湖にも漂っているにおいだ。 余呉に投宿し、気持ちの良い早朝に余呉湖の外周をサイクリング。 そんなプランも考えられた。 実はここに来る前は、距離が約5kmなのを知った上で、 徒歩で余呉湖を周ろうかと思っていたのだが、 思いのほかスケールが大きく、見るや否やその計画を放棄。 なるほどそれでレンタサイクリングに力を入れているわけだ。 しかし、こうして余呉湖を眺めていると、冬はさぞかし引き締まって美しいのだろうなと思った。 美しいというか、どか雪でそれどころではない可能性もあるけれども。
湖に突き出す土の小さな岬。
余呉湖畔の手前から振り返って撮影。
帰り道。
もう列車が来てしまった。この列車はあきらめることに。
急がずに歩き、右に折れて余呉駅へ。
駅前通り?
駅前通り?
余呉駅駅舎に再び戻ってきて。
駅舎に戻り、中へ入って時刻表を見ると、 次ぎの列車は20分後だった。 天然木の椅子に座り、駅の前にある自動販売機で買った冷たい飲み物を手にしながら ラックから何枚かのパンフレットを手に取って長い間眺め入った。 しばらくすると法事帰りのような、 紫の風呂敷包みを持ったおじさんとおばさんの一組の夫婦と、 また別の一人のおばあさんが腰を曲げてゆっくりと駅舎の中に入ってきた。 おばあさんは窓口で敦賀までの切符を買って、 次ぎの列車の時間を窓口の人に聞いた。 窓口の人が、長い間列車の到着を待たせることになるような、 申し訳なさそうな口ぶりで次ぎの敦賀行きの時刻を告げると、 おばあさんは、家で去年の時刻表をあてにしてここに来たと言って、仕方なさそうに笑った。 私は、ここから敦賀? 買い物かな、と思ったが、後から考えてみると病院通いに違いなかった。
パンフレットにいつまでも見入っていると、入線の放送がないため、 危うく乗り逃しそうになった。 急いでホームに駆け上がると、重そうなクモハ419がどっしーんと停車するところだった。 さきほどの夫婦は先にホームに上がっていて、余裕を漂わせながら列車に乗り込もうとしていた。 私は急いで乗り込み、隣の木ノ本駅を目指した。
次に訪れた駅: 木ノ本駅
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