須磨駅

(山陽本線・すま)

  神戸から山陽本線がはじまってわずか7.3km. 海の見える停車場に着いてしまった。 6車線の道路が走り、日中人通りが決して途絶えない、 あの都会の三ノ宮からたった14分だった。 神戸を過ぎると、車内が静かになっていた。 列車が駅に停車するたびに車窓からホームを見ていると、 それまでの駅のホームにいた人よりも、人が少ないということがはっきりとわかった。 がらりと雰囲気が変わったから、なんかおかしいなとは思っていたのだが。

タイルに覆われた床面のホームと一部半透明になった上屋とそこから吊り下げられた発車案内板。奥の方は橋上コンコースの下にあたり、少し暗い。 橋上コンコースへの上り階段前付近の風景。下り線ホームにて。

中央に個掛けの椅子とゴミ箱のあるホーム。少し先の方で上屋は無くなっている。 下り線ホームから神戸・三ノ宮方面を見て。

隣のホームを斜めに見て。人は誰もいない。 上り線ホームの向こうを特急はるかの編成が通過していった。

隣のホームとその向こうの町の風景を見通して。 駅名標のエコーとVending Corner.

上屋から吊られた電照式駅名標。 神戸市内の駅であることが示されている。 隣の鷹取駅は鷹取工場で有名、塩屋駅はここと同様海に近い駅だ。

一部分が透明な波板になった上屋。 上屋の透明な波板が潮風を連想させる。 下り線(1・2番線)ホーム自販機前にて。

橋上コンコースから足を出すように、駅構外へ出る階段降り口。 橋上コンコースから海側に降りる階段。

銀ねずみ色のフェンスの向こうは砂浜と海。 そして、もちろん海。

駅の建物の中で、橋上コンコースの下にあたる部分の施設。コンクリートむき出しの階段など。 橋上コンコース下の様子。 施設があるらしいが何に使われているのかよくわからない。 この階段を制服を着た掃除の人が通っているのを見た。

コンクリート打ち放しでできた門のような形状の部分。 階段降り口付近のようす。 コンクリートに付けられた小さな電照式案内板が古風だった。

水色のエレベーター。 このエレベーターには感心した。 駅舎の枠塗りと同じように、水色に塗られている。 とても雰囲気があった。

コンクリートによって四角く切り取られた海の風景。 海に降りる先ほど見た階段とは反対側の階段。

手書きの注意看板。 すぐ近くには禍々しい注意看板が並べてあった。 ゴミの投棄がひどいらしい。

関西テレビのキャラクターを起用した海茶屋の屋根看板。 ハチエモン茶屋の看板が駅構内に向けられてある。

フェンスと白い倉庫と砂浜と海。 また海への視界が開けた。 砂浜と駅構内の境にあるフェンス上部の有刺鉄線がしつこく張り巡らされていた。

ホームと列車先頭。 普通西明石行き。快速列車との接続待ち中。

ホームと中線。隣のホームがよく見える。 2番線、3番線のようす。

上屋の終わりを遠くに見て。ホーム両線に列車が停車中。 終わった上屋を振り返って。床にある鉄板も潮風のせいか赤茶にすっかりさびている。 姫路方面網干行き快速列車がやって来た。

電信柱とフェンスと海。 ホームからは倉庫の並びが海を遮っているが、 たまに隙間があって、海が眺められる。

立方体の街灯が二つついたポール。 少し洒落た街灯。

ホームに建つ駅名標。 駅名標。

向かいのホーム越しに見る家々とマンション。 2番線から巨大なマンションが見えた。 さぞかし海の眺めが良いことだろう。

自販機や椅子などのあるホーム。 ホームに停車した列車のドアは開いていて、多くの人が座っているのが見える。 代わって、上り線(3・4番線)からの風景。 さっきと同じように1番線に普通西明石行きが停車中。

橋上コンコースのため少し暗いホームとその向こうに覗く海。 3番線から見た海の家と海。

フェンス越しに見る商店の並んだ駅前。 4番線から見た須磨駅前の風景。

電照式の青い案内板。 3・4番線ホームへの階段途中にて。 これらは京都発須磨止まりの列車。

クリーム色のタイルを敷き詰めたコンコースと自動改札。 改札内コンコースの風景。

自動改札とコンビニ。 床には舵の中に海が書かれた絵があった。奥にはコンビニのHeart-in.

  途中下車印をもらうため、有人改札に並んでいた。 私の前にいる30代くらいの女性が定期乗車券を見せながら700円ぐらい払っていた。 この人も海に惹かれたのだろうか。それともただの用事なのだろうか。

自動改札の並びと手前のスペース。 改札を出て。発車案内板が鮮やかな液晶表示だった。

  駅員は、押すのが快感かのようにすぱんと下車印を押した。 もう少し丁寧に押してほしい。印影が不鮮明でよく読めないほどだったが、 これは押し方だけでなく、印面がかなり磨耗していることに拠るようだった。 それだけ途中下車する人が多いということだろうか。  駅コンコースはやや広く、少し古い感じで静かな雰囲気だった。 みどりの窓口は一つで、しかもガラスに囲われたブースなどがなかったことに少し驚いた。 というのも、まだ神戸・三ノ宮の駅の風景を引きずっているからだった。

多少広いコンコース。人はあまりいない。 券売機前からコンコースを海側に見て。

壁が全体的に引っ込んだところに作られたみどりの窓口。 みどりの窓口。一つだけで混まないのだろうか。

  コンコースから浜辺に下りる階段手前にファーストフードのSUBWAYとKioskがある。 こんなところにSUBWAYを出店してどうなんだろう、と思っていたが、 私が見ている間にも何人かの客が利用しては階段を下っていく光景を見たので、 なるほど、と思った。都会にこれだけ近い駅の裏に大きな浜辺があるのだもの。 遊びに来る人の視線が止まらない訳がない。 特にイベントのある夏は、忙しくなるだろう。 ところでこの駅コンコースには、ほかの駅にはほとんど見ることのない、 あるものが置かれている。とても意外なものだ。

クリーム色のタイルを敷き詰めたコンコース内。少し向こうに二件の店が見える。 コンコースの海側にあるファーストフードのSUBWAYとKiosk。

それはアルコール飲料の自販機。ここで買って、浜で一杯やるわけだ。

窓から少し太陽光が差し込んだ、がらんとしたコンコース。 コンコース国道側のようす。

民家群と電信柱。 コンコース突き当りの窓から見た須磨駅前の町の風景。

  橋上コンコースから国道側を眺めると、 かなりの密度で住宅と集合住宅が集まっているのがわかった。 そして山手に行くほど丘陵地帯で、おもしろそうな細い階段などがあった。 窓から離れようと思うと、何か引っかかるものがあった。 もう一度見てみた。屋根と屋根のごくわずかな隙間から、 どうも駅のホームらしいものが垣間見えるのだ。

民家の屋根。アパートの屋根。電信柱。 よく目を凝らすと…。

JR須磨駅と書かれた大きな駅名表示板。地面に二本足で立てられている。 須磨駅駅名表示。

幅広い階段のある橋上駅。 須磨駅駅舎。

  大きく幅の広い階段を降りて駅前に降り立つと、 タクシーといくつかの個人商店が目にはいった。 そしてその少し先で大きな国道にぶつかるようだった。 きっと山陽道・国道2号に違いない。   駅舎は平たい箱から階段の足を伸ばしたような昔からの橋上駅で、 特徴ある概観がないタイプの駅だった。 また駅舎本体に駅名表示がなく、少し物足りなさがあった。   いくつかの商店を右にしながら歩くと、すぐに大きなT字路に出た。 4車線の国道2号だった。

かなりの規模の大きいT字路。 須磨駅前信号。

  国道の通りには小さな商店が並んでいるが、その中にまぎれてなんと、 山陽電鉄の須磨駅駅舎が…。

薄みどりと白色の二階建ての建物。 山陽電鉄・須磨駅駅舎。

初めのうちは店の一つだと感じていたぐらいだった。 そう、あのコンコースから見えたホームは山陽電車のもの。

軒上にかがけられた看板が古い。 国道脇にあった古い文房具屋。

  国道を離れて、再び駅の方へ戻った。 今度は海岸に行ってみよう。 コンコースに上がらずに行ける自由通路を探したが、 見つかりにくそうだったため、近くのエレベーターに乗ったら、 なんと室内二面に扉のあるエレベーターだった。
  一階のエレベーター乗り場に土地の余裕がないからそうなったらしい。
  不思議と人の少ないコンコースを歩いて、 海岸へ下りる階段の前まで来ると、 左手にあるSUBWAYで女子高生二人が何か買って階段を降りていくところだった。 左右に階段が足を下ろしていた。 どちらから下りようか、少し迷った。 さっき三ノ宮に降りたため、 駅の出口を間違えればまったく違うところに出てしまう都会の感覚が、 ここに来てもまだ呼び覚まされていた。

下っていくある程度の幅のあるコンクリートの階段。 コンコースから海へ階段。 こちらは姫路側を向いている。

  左手の階段の先には海の家のような屋根看板が見えた。それでこちらを選択。 もう10月だったから海の家の営業は終わっていた。 それにしても、コンコースから階段を下りたすぐ目の前が海の家だとは。

階段を降りている途中に上部に目に付く赤字の横断幕。 階段を下って。迷惑花火禁止の横断幕が目立つ。

白いシャッターの下りた屋根看板のある海の家。 海の家前にて。シャッターの前は駐輪所代わりにされていた。

両脇に二輪車がたくさん止められた階段上り口。 須磨駅・須磨通り出口。振り返れば…。

広い砂浜。 砂浜と海。 迫力ある砂浜へ。

自転車の倒れたままになった砂浜。

太陽が低くなりかけたビーチ。 姫路方面を望む。サンセットビーチ。

駅舎の脇と遠くに先ほどの海の家。 さっき出た駅出口の辺りの様子。海の家と須磨浦通り。

  10月半ばにしては空気が穏やかだった。 動くと生暖かいという秋晴れで、空は水色のほかに、 水色を透す薄い雲が天球の端に伸びていた。秋らしい空だった。 焼き菓子を粉々にしたような明るく荒い砂浜と、 コンクリートの突堤とよくに合う海の水色が、この辺の海辺らしい風景らしかった。 砂浜がファンデーション色に強く照り返された夏の日々は終わり、 海水浴に踏みしだかれて疲れた砂浜がぼこぼこ横たわっていた。
  砂浜に出て振り返ると、階段前のコンクリートに腰掛けている人が3人いた。 3人とも離れあっていて、3人とも自分に強く没頭していた。 お互いを空気のようにしか感じていないようだった。 一人はカッターシャツにスーツのズボンをはいた男性で、 缶ビールを飲みながらうなだれ、鼻を真っ赤にしていた。 もう一人は鳥打帽を被った女性で、この人はイヤホンをして目を瞑り、 すっかり音楽を聴きふけっていた。 いったい何があったのだろうか、と思うほどの耽溺。 この場所・この駅をどれほど必要としている人がいるのか、よくわかった気がした。

遊泳案内などが書かれた大きな立て看板二つ。 須磨海水浴場の利用案内(注意書き)。期間は7/6から8/20だという。

フェンスの向こうにホームと駅名標が見える。 反対側の出入口から見た駅構内の風景。

褐色に変色した鳥居。 三社大神宮。鳥居の変色が物凄い。

ゴミ箱のある砂浜。 三ノ宮方面を望む。

  汀には小さな貝殻が帯状に打ち寄せられていた。 これに意外な気持ちを抱いた私は少し反省した。 あまりにも都会に近く、 ここが人工的なビオトープであるかのように受け取りかけていたようだったからだ。 ここは正真正銘の海、 都市の只中にある、人が制御できる池や噴水とは違う。 また、これは歩き回ってわかったことだが、この日もこの辺で漁業が営まれていたのだった。

貝が帯をなして打ち寄せられた汀にて。 汀(みぎわ)にて。みんな死んでいった貝。 小さな子たちが楽しそうに拾うのを待っているのだろうか。

  季節の割りにこの日は気温が高いとあって、 泳いでいる男性が3,4人いた。 周りの人も驚かなかった、しかしもとより見ていなかった。 泳ぎ終わった一人は水際で裸になって着替えていた。 それも私以外だれも気付かないようだった。 すべてに目を瞑るような環境に、少しだけ怖くなった。 都会の空気だった。

突堤の先端の様子。 突堤右端には先ほどSUBWAYで買い物を済ませた女子高生二人。買い食い中…。

突堤のL字型の様子。 突堤左端には泳ぎ疲れた男二人。

突堤中央の様子。 中央に釣り人。互いにまったく干渉し合わない。

向こうに向かって少し盛り上がりが感じられる砂浜。 三ノ宮方面。砂浜に起伏があるのがよくわかった。

  ただ、都会に近いだけあって、ゴミがすごかった。 大型のゴミ箱がいくつもあるのだが、どれも溢れていて、 周りにこぼれ落ちていた。砂浜のところどころにも、捨てられていた。

砂浜の低くなったところから少し先にある駅舎を見て。 海岸線から見た須磨駅駅舎。 工事中らしくネットで覆われていた。

海の家。 脱衣・シャワー・荷物預かり、大人1000円小人500円。

すっかり錆びたトタンの波板に覆われた粗末な小屋の群れ。 貸うき、パラソル、500〜1500円。海の家らしい値段だ。 なお事故の責は一切負わないとのこと。

砂浜の中に一条に伸びるアスファルトの道。 砂浜に作られたアスファルトの道から、大阪・三ノ宮方面を望む。 中央左の目立つ建物はシーパル須磨で、神戸市立国民宿舎須磨荘。

水面に夕日がきらきらしている。 姫路方面を望む。

コンクリートの階段下り口。地下へ入っていく。 駅構内をくぐる地下通路入口。ここを通れば橋上コンコースを通らず国道側へ出られる。

青い板に白い字で表示された街区表示板。 街区表示板。須磨区須磨浦通五丁目8。

小屋の中から。切り取られた海を見る。 漁業の仕事道具をしまう倉庫から。

砂浜。ずっと遠くに少し高い建物の群れ。 砂浜と海。 駅舎・須磨荘を遠望して。

  砂に覆われたアスファルトの道を時折自転車がゆっくり通っていった。 地元の人のサイクリングだろう。 砂浜が広いから、それでも落ち着いて歩いていられる。 自転車より散歩している人の方が多かった。
 砂の被った細道から海をじっくり眺めていると、 遠くの何隻かの大型客船がじつにゆっくり航行しているが、霞の中に見えた。 ああ、瀬戸内海なんだね、ここは…。
  気楽に逍遥する地元の人と、 別のところから来て自分に没頭している人たちは対照的だった。 都会の中では独りになりにくいのだろう。 自らだけを振り返るのに、強いエネルギーを使っているようだった。

砂浜と海と突堤。 どの突堤にも2,3の釣り人はいる。

京都から西明石までは旧国電がよく見られる。

砂浜と、倉庫の間から垣間見える青い色の電車。 駅舎前付近にて明石・姫路方面を望む。

  駅から北側、三ノ宮方面に歩くと漁港があり、 昔と変わらない須磨の姿が偲ばれた。

パイプで組んだ骨格の下で網を調整する人たち。 漁具の手入れの最中だった。

コンクリートの波止場と小型ボート。 漁港にて。

陸に上がった舳先の下に猫。 漁港の船陰に灰色のねこがいた。

階段状になった船着場。はとがたくさんとまっている。 船着場に群がるはと。港には鳥、猫、魚…。

コンクリートの漁港。 漁港と砂浜の境。

  漁港を過ぎると海浜公園になった。 海岸から離れて東屋や砂を被った薄い階段などがある。 小さい女の子がその父に連れられて三輪車を砂の上でこいでいた。 駅を出たときには遠くに見えていた須磨荘も、 その横に目立っていた背の低い赤い灯台もだいぶ近くなり、一通り歩いた気もしてきた。 その赤い灯台は和田岬にあった灯台を移してきたものだという。 和田岬といえば和田岬支線だ。こんなところにゆかりがあるとは。

砂浜。向こうに林があり、ホテルの建物が見えている。 浜辺の湾曲した部分。 公園手前にて。

  ずっと遠くにまた漁港があって、 須磨の海岸も大体つかめたらしいからこの辺りで引き返した。 帰るときは線路沿いの道を見つけて歩いた。 小さなアパートがよく目に入った。学生が住んでいるような感じだった。 また、土台だけは年月を経て変色した花崗岩なのに、 建っている建物は新しいという建物にいくつか出会って不思議な感じがした。 土台があの神社の鳥居と同じ色だった。

線路内の風景。少し先にホームの先端が二つある。 北側から見た須磨駅構内。

白い大きな建物の下の、石の土台。 変色した花崗岩の土台。

砂浜に埋もれるように敷かれた鉄板と海。 橋上コンコースからの階段前にて。 鉄板が敷かれている。

階段踊り場にて。 「ここで足元の砂を落としてください」とのこと。

  駅の階段に着くと、床にある人工芝生で足の砂を落とすようにとのことだった。 そこには砂浜に近い地方の海の駅の一シーンがあった。そこだけは。
  ホームに下りたが、夕方だというのに人は少なかった。 私がここに降りたときも、海岸に降りる人の方がよく目に付いたぐらいだった。

  ここは心を休めに来た人が普段から降り立っているようで、いろいろな人がいた。 酒を飲んでいたり、音楽を聴いたり、釣りをしたり、時期はずれなのに泳いだり。 誰の視線も気にもせず、それぞれが楽しんでいる風景に、少し安心した。 三ノ宮駅の、視線と視線が交錯する、あの激しい雑踏にとどまったあとだっただけに。
  駅を出たらすぐ砂浜・海水浴場という駅は国内にたくさんあり、 都会からでも短時間に列車で到達できるそのような駅がいくらかあることも考えれば やはり海に囲まれた国なのだなと思わずにはいられない。
  都市の身近なところに海浜があるのはその都市の人々の支えになるが、 もっと爽快な海を今夏に知った私は、ここを見て、 いつかまたあのときの、あの場所の海に行きたいと強く願った。 しかしそのとき須磨の浦は、その海をイメージの模型として捉えた私と、 そこで気ままに過ごす身近な都会の人々を穏やかに包み込んで、ゆるしていた。 そして、地の恩恵にあずかり通しであることに気付いた。

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