親不知駅
(北陸本線・おやしらず) 2008年8月
未明に起き、薄明を越え、朝日が天嶮の山によって遮られてできた眩しくない、すべてのものを直視できる明るく薄青い影の親不知の朝を歩いた。高架橋がはっきりと浮かび上がっていた。そしてここでは、ほとんど東西にしか歩けないのを実感した。平地は皆無で、後は海だった。何と単調なのだろう。住んで1週間で散歩に不満が鬱積しそうだった。ともかく、山の向こうがどうなってるか知りたくてならなくなってくる。山を越えると、平地が広がり街があるのではないかと思い詰めるようになってくる。そう考えて探索した人もいるかもしれない。実際は、この山塊は糸魚川静岡構造線の一端だから、越えても越えても、越えても山なのだ。海に出るしかないなと思う。海に出て、漁のほかに、直江津や泊・入善あたりまで舟で行き来したかもしれない。
朝の親不知駅。
狭いのでこのような認識の仕方になることが多そう。
この閉ざされた中はどんな空間が広がっているのだろうか。
これでもだいぶ山を削ったと見える。
はっきりいって小さい駅ではなく、中くらいの部類に入る。
子不知方面。
向こうにもう一線あった。あの向こうは法面になっていて、浜辺になっている。
床面のコンクリートがすごい。
歌ヶ浜海水浴場とは、この駅構内の真下。しかし泳げる雰囲気ではない。
昔は全然違ったのだろう。
JRの倉庫。新しい。最近も人の手が入ったんだなと思う。
右おそらく貨物側線跡。
へばりつく家々。
ホームの延長された部分。
市振方面を望む。
民宿。
高い方は北陸自動車道、低い方は国道8号。
結局6時になっても、6時半になっても陽射しはなかった。雲のない晴天で、まだ盆のころだというのに…。列車の着く直前6時45分くらいになってようやく日が差した。すると涼しい空気をもう、二度と感じることはなかった。温かいお茶などとんでもない。今日もほとんど下車するたびに冷たい飲み物を買うことになりそうだ。
この下り始発の来る前になって、すぐ近くの民宿から、ザックを背負いピッケルを差し、頭にバンダナした二十歳台の四、五名の登山者が駅にやってきて、ホームで待った。列車の時刻になるまで民宿で待機していたようだ。太平洋側から縦走してきた人かな、なんて考えるが、それだけの日数を取ることは難しいから、白馬岳あたりから栂海新道を下りてきた人なのだろう。3000m級の山々から海抜0mの日本海に下り立つのは、登山者のあこがれのルートだそうだ。
朝日の色に海面が染まらない鮮やかな車窓を見せる直江津行きは、冷房がよく効いていて、親不知駅から少しも離れようとしない私を引き離して行った。このまま糸魚川まで行くことが多かった私は、今日隣駅の青海駅に降りてみる。
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