天理駅 - 桜の桜井線・和歌山線紀行 -
(桜井線・てんり) 2007年4月
櫟本から列車に乗った。天理に近づき、高架上の留置線に感心していると、
列車は車体をがさつに揺らしながら、ホームの中央にあっという間に滑り込んでいった。
2両編成の105系らしいところである。天理駅着。
高架駅だが、鉄骨の桟があって見晴らしはさして利かないようだった。
乗り場全体は利用者の多そうな造りで、
6,8両編成の221系などが似合いそうだ。
しかしそういう風景でありながら、平時は人の少ないのが、この駅の真実らしい。
ホームはその幅ぴったりの上屋で覆われ、床面に深い影ができていた。
向かいのホームはまったく利用されている気配がないが、
あれが噂の天理教の団体列車専用ホームなのかと思った。
きょうは発着列車がないようだから、
あのホームには行けないようだ。少ししんみりした。
列車が去ったので、鉄骨の桟の隙間から無理に外を覗いてみると、
広大で、非常によく整備された駅前広場が見え広がって、どきりとした。
滞在予定時間が1時間しかない。
ホームを歩きはじめると、人は1人か2人いるだけだった。
ああして座っている人は乗り逃したのだろうか、
次の上り・下り列車は30分以上先だった。
ホームの中心付近の風景。
4番線を桜井高田和歌山方面(下り)に見て。
4番線からは駅前の風景が垣間見える。
4番線を奈良方面に見て。
桟の途中にある四角いものは駅名表示の裏側。観音扉がついてあった。
奈良方面に少し歩いて。
かなりがらんとしていた。
3番線から見た隣のホームの様子。
もちろん人っ子一人歩いていない。
隣のホーム向こうに見える屋根は近鉄天理駅の上屋。
ホーム奈良方の端にある団体専用出口。
団体専用出口の脇にはまだ白線が残されていた。
4番線から奈良方面を望む。
すぐ向こうに規模の大きい電留線があるはずだ。
天理輸送本部。このときはもぬけの殻。
消えかかった字は「天王寺鉄道管理局」となんとか読める。
国鉄時代の名残で、現在の天王寺支社にあたる。
ホーム端から桜井高田方面を望む。
ホーム中央付近で列車を待つ人々。
1時間後の光景。
3番線中ほどから桜井高田方面を見て。
駅名標。
桜井方面に口を開けている方の階段下り口を反対から見て。
JR京都線の各駅と見比べて遜色がない。
階段下り口上部には、この駅にあることがよく知られている
「ようこそ おかえり」の看板が掲げられている。
おぢばがえりの人たちを迎える言葉。
ホームを桜井方面に歩き続けると、すっぱり屋根が途切れて、
舗装されていないホームに出た。
駅名標や錆びた名所案内板、錆びたのっぽの街灯が
ぽつりぽつり土の地面に立ち尽くしている。
このあたりはかさ上げもされず、昔ながらのコンクリートに白い点線が描かれていた。
天理駅の高架化は古く、1965年だったという。
このあたりまで来ると桟もなくなって見晴らしがよくなった。
3,4階建てのビルが立ち並び、市街らしく、
だだっぴろい駅前広場も手に取るようだった。
桜井高田和歌山方面を望む。
ホームから見た街の風景。
天理本通はアーケード商店街のようだ。
駅前広場。
まだ残る白線のある風景。
隣の1・2番線団体専用ホーム端の風景。
3・4番線ホームの駅名標と名所案内。
奥のマンションに住んでいる人は
天理臨がしょっちゅう見られるかもしれない。
奈良方面を望む。
階段を降りて。向こうが奈良方面。
降りてきた階段を望む。この段が中二階。
右手に団体専用の改札口があった。
団体専用改札口。鎖が巡らされ、
明かりも消されていて暗かった。
1・2番線団体専用ホームへの階段。
こちらも柵で封鎖されていた。
中二階から見た改札口。
改札内コンコースの風景。左折すれば3・4番線ホーム、
右折すれば1・2番線ホーム。
改札口。桜井線所属の駅で自動改札が導入されているのは
ここと桜井駅だけ。
改札口を出て。コンコースの風景。
券売機のある側から見た風景。右手に改札口。
改札外コンコースは広くなかった。 天井と床は改装されたようで白く明るかったが、 壁は昔のままで、釉薬を塗ったような暗い緑色の古いタイルが昔の名残をよくとどめていた。 団体専用改札口を出たところの空間も、ほぼ高架化当時のままのような雰囲気だった。
駅舎内にあった閉じられた暗い団体専用の改札口が、
この天理駅が何たるかを象徴していた。
毎月26日には天理教教会本部で月次祭が開かれ、
特に秋季大祭・春季大祭・教祖誕生祭・元旦祭は規模の大きな祭典になるという。
最も開催期間の長いこどもおじばがえりは毎年真夏の7月26日から開かれ、
子供たちが教理を学びながら十分楽しめるよう考えられた、充実した祭典となっている。
ぢばに帰ってきた人たちを喜ばせずには帰さない、という気持ちで、
疲れや暑さの中、中学生から成人まで明るく奉仕していると知らされた。
ぢばとは天理教で人間の作られた場所。
いずれの祭典もこのぢばに海外から信者が集まってきて、
国内にとどまらない宗教であるそうだ。
それはさておき、
これらの祭典に応じて遠方から天理行きの臨時列車が運行されることが
しばしばあり、天理教の公式サイトでその天理臨の情報が簡単に得られる。
定期運行から外れた寝台車の編成がやって来ることもある。
天理臨に乗るには各教区・詰所でおぢばがえり団参券依頼書をもらい、
決められたJCBの各支店に持ち込んで団参券を購入する必要があるという。
外へ出て。
駅舎から外へ出た。肌寒い日で、 整然とした石張りの広場を冷ための風がそよぎわたっていた。 春先の寂しい植え込みの縁に何人かで腰掛けているご老人たちの中に、 パンを齧っているおじいさんがいて、こんなとこで寒くないのかなと思った。 十分すぎるぐらいに広がる石張りのきれいな広場を、 春休み中の学生が自転車に乗って走ったり、 ご老人たちが思い思いにとぼとぼ歩いていたりした。 広すぎて、遠くの方を歩いている人が小さく見える。 きっと祭典のときの人入りも考えてこれだけの広さが用意されたのだろう。 ごみもなく美しく、思い切った土地の取り方だった。 私の普段使う駅の前もこのぐらい広ければ朝の気分も変わるだろうに。 そう考えたところで、ふと自分の気分の変化に気付いた。 この広場は、祭典の人出だけを考えて作られたのではないと思われる。
駅舎の端の様子。
天理ステーションストアというのが少々古風。
駅舎軒下にて。
軒下の石張りは広場のものと違って昔からのものだった。
上の写真左手にある、
団体専用改札口を出たところのスペースをガラス越しに見て。
改札口の入口には「またおぢばへおかえり下さい」とあった。
団体専用改札口や、改札口を出たところというのは 改装されておらず、古くからの高架駅を示す風景が見られた。 団体専用改札口が利用される日に来ればよかったとも思った。 この改札口が使われない日には、1・2番線ホームにすら入ることはできない。
軒下にて。コンビニHeart-in前にて。
コンビニの横には駅の裏に出られる通路がある。
荷物の運搬を昔やっていたような感じの所だった。
通路内の様子。
南都銀行のATMや規模の大きいコインロッカーなどがあった。
駅の裏側から見た通路内の様子。
通路の隣には近鉄の出札口と改札口がある。
近鉄天理駅改札口。
端頭式ホームの風景が広がっている。
有人改札のブースが残されている。
利用者が多いときに使われるのだろうか。
近鉄の改札口前付近から見た天理駅駅舎。
駅舎の軒下を辿っていくと、近鉄の改札口がある。 近鉄天理線はJR線に対して直角方向にやってきて、 JRの高架下に入り込むようにして終わっていた。 近鉄の駅舎という独立した建物はなく、 もしJRの高架がなければ格好がつかない駅でもある。 近鉄改札口前はそれほど広くなく、 すぐ近くに地下道への下り口やバスターミナルがあった。 このあたりを歩いていると3人ぐらいの白い肌の外国人女性がキャリーを引いて にこやかに歩いていた。おぢばがえりだろうか。
近鉄改札口前の広場から見たバス乗り場。
広場を向こうまで歩いた。微かに坂道になっていた。 歩いていくうちに、ただのきれいな広場ではないと悟った。 徐々にすごいという気持ち、感動のような気持ちが沸いてきて、 宗教的な壮麗さが、そこにあるのに気付いた。 列車でやって来てこの広場を歩けば、 確かに自分は天理市にやって来た、という意識が強く刷り込まれる。 忘れられない広場である。
天理駅駅舎その1。
天理駅駅舎その2。
広々とした駅前と駅舎。
ここにはどんな基準があるのだろうか、探るように歩いていると、
自分がこの街への一定の信頼を抱いているのに気付き、抱き続けたい気持ちになった。
しかし、道行く一人の人をふと見ては、いつもの街の見方も必要かなと思った。
一つアーケード街に入った。多くの店が開いていた。
アイスクリームが売っている店があり、思わず買いそうになった。
寒い日にアイスを食べるのが好きなのだが、このときは割愛である。
途中で横道にそれ、駅に向かう大通りへと出た。
地下道に入るときれいに整備されていたが、
おびただしい数の自転車の入った駐輪所があり、まるで地底王国のようだった。
2003年に整備されたという。3人ぐらいの男性係員が位置を正したりしていた。
駅前広場を出て右手の様子。
天理本通のアーケード商店街に入って。
振り返って。
昔からの商店街。
左の横道の風景。
再び駅前へ出て。
上の写真背後の風景。
右手に見えている変わった屋根の小さな建造物が地下道への入り口。
地下道にあるエレベーター。
どのような人が優先されるのか、イラストで示されてあった。
地下道の様子。広く明るく圧迫感がない。
分かれ道にあった光の展示物。
何か天理教に関する意味があるのだろうか。
天理駅地下駐輪所の風景。
駅裏の風景。
レンタサイクルがある。
歩き進むとごく一般的な町だった。
来た方向を振り返って。突き当りが近鉄のホームにあたる。
裏側から見た駅舎。駅名表示すらなかった。
駅舎を通り抜けた直後の風景。
右手に近鉄のホームの壁。カーブして入ってくる道が印象に残る。
駅の裏に出てみると、駅前とは対照的だった。
駅舎前の歩道のコンクリートの割れたままで、
土地も手狭、しかし親しみのあるいつもの街の風景がそこにあった。
道が無理にカーブして駅裏に入ってきいるのさえ、どこか懐かしい。
少し離れたところに、桜の咲いた小さな児童公園を見つけた。
桜で公園に気づいたのだが、随分つつましい咲き方のように感じられた。
大きな祭典の想像が、すっかりほどけていた。
予定通り1時間後の列車に乗った。
今度は親しみやすい小さな駅のはずだ。
駅に着くと、開いたドアから楽な気持ちでホームに足を伸ばした。
次に訪れた駅 : 長柄駅