関駅
気動車というのは不思議だ。関駅のように賑やかな道路沿いにある駅でも、 気動車が去ってしまうと急に寂しい雰囲気に包まれるように感じる。 逆に、気動車が来ると、駅が華やかな雰囲気に包まれるように感じるともいえる。 列車が駅に着くと、待っていた人は列車を逃さなかったことを 確認するように着実に乗り込み、 降りる人は慌しく車内で改札を受けて降りてゆく。 一通り乗り降りが終わって扉の安全確認が終わると、 あっという間に折戸をパタンと閉じ、 エンジンをゴウゴウいわせながら去っていってしまう。 どこか急いでいるような感じ。ちょっと無愛想な感じ。 もっとゆっくりしてけばいいのに。 扉が開いたまま人の出入りのない一瞬のシーンが幻のように思われる。 しかし、気動車が去ったおかげで、列車内とは違う、 新しい時間の捉え方を自分に与えられた気がする。
上り線ホームから加太駅方面を望む。
駅舎の回廊の下に設けられた椅子と花の植えられたプランター。
加太駅から7分、関駅に降り立ってまず感じたのは気温が違うということ。 加太駅では冬らしい朝の爽やかな寒さがあったのに、 関駅ではとても過ごしやすい気温になっていた。快適な冷たさとでも言おうか、 体を縮こまらせず、のびのびできる冬の気候だった。
駅前の道路は交通量が多いようで、 駅舎への入口付近に立っていると走行音がわりとよく聞こえた。 コンクリートの庇を鉄骨が支える駅舎の回廊の下を歩き始めると、 回廊を支える並んだ鉄骨の柱が、歩くたびに目に入ってくる。 その柱は錆止めペンキを塗ったままのような色合いの鉄骨で、 ところどころ塗料の剥げているところもあり、 その辺りだけを見回すと都市近郊の2,30年経った駅という感じがした。 遠くをぐるーりと見回してもなんだかぱっとしない晴れた冬の関駅は 少し間延びした雰囲気もあった。
上り線ホームを加太駅方面に歩いたところにある信号機室。
信号機室を過ぎて。 このホームの端は舗装されず灰色の工事用の砂利で埋められていた。
駅名標。
降り立った上り線ホームを加太駅方面に歩いてきたが、 先が長い上に何もなさそうだったので引き返してしまった。
振り返って亀山方面を望む。
続いて跨線橋へ。
跨線橋から加太方面を望む。
跨線橋を降り、下りホームから見た駅舎。 こうして離れて見ると鉄骨の回廊が立派に見える。
ホームに造られた庭。
庭の花壇。
下り線ホームの加太寄りにはちょっとした庭がしつらえてあり、 その庭の中心をなす、背景にゴールドクレストを植えた、枕木で囲われてできた花壇には 色々なパンジーが植えられていて冬枯れの背景に彩りを添えていた。 花壇の背後には「花いっぱい運動 関宿 商工会女性部」 と書かれた木の看板が立てられていたが、 この「花いっぱい運動」は島ヶ原駅でも行われていたものだった。
しかし、下り線ホームの柵越しに広がる風景を見ると、 駅舎のある側の喧騒がまるっきりうそのように思われる。 駅前が喧騒に包まれているのは、国道1号線があって、 そこを通過していく自動車の交通量が非常に多いためだったが、 こちらは田畑が広がり通行する自動車は見られないほどだった。 関駅のあるこの地は今では宿場町としての役割は終え、 一つの通過点となったのだろうと感じた。
下り線ホームの向こうに広がる風景?
下り線ホームの向こうに広がる風景?
下り線ホームの亀山側の風景。
上り線ホーム側にある車庫を下り線ホームから見て。
下り線ホームに立てられた「郷愁街道 関宿」の看板。
下り線ホームの待合室。
跨線橋から亀山方面を望む。ずっと遠くにポイントがあることから、構内の広さがよくわかる。
跨線橋から亀山方面を見ると 明るい東海の道が伸びていて、少し胸が膨らんだ。
上り線ホームに戻ってきて、下り線ホームの亀山側を望む。
上り線ホーム端にある側線。
上り線ホームの回廊に戻ってきて。
駅名標。
さあ駅舎内へ。
駅舎に入った右手のようす。観光協会と出札口がある。
出札口のようす。
今入ってきた改札口を望む。
観光協会の向かいには食事処があった。 コーヒー100円、名物巻き寿司420円。
店内のようす。
駅舎出口と観光協会。
駅舎内は食事処と観光協会とが向かい合い、 人の行き交うことのできるのは、それらに挟まれた割と広いスペースだけなのだが、 広さはあるにもかかわらず、そのスペースで列車を待つ、 というようなことはあまりされないようだ。 というのは、食事処も観光協会も大きなガラスの引き戸で、 落ち着いて立って待つことはできないのだ。 そんなときはホーム回廊下にあった椅子に座って待ったり、 駅舎内の食事処でお茶しながら待てばよいのかもしれない。
駅を出ると、やや広いアスファルトの敷地を挟んだ向こうに、 国道1号線が横切っていて、とても賑やかな雰囲気だった。 国道を向こうに渡るための歩道橋の欄干に取り付けられた 青い看板には名古屋、四日市までの距離が書かれていて、 その横には国道1号のおむすびまであり、 国道1号という大動脈を途中からちらっと覗いた感じがした。 ちなみに、青い看板には名古屋73km,四日市29kmという距離表示だった。 関西本線の営業キロではここ関駅から名古屋まで65.6km,四日市までは28.4kmとなっている。 駅から出た左手奥にはできたばかりの大きなロータリー式の駐車場が設けられ、 そのさらに奥には垣根を挟んで道の駅が造られてあった。
ロータリー式の駐車場。
駅舎入口。出札口が中に見える。
駅舎前は観光地らしい雰囲気。
駅舎は亀山商工会議所関支所を併設している。
上の写真右端に写っている本物の郵便ポスト。 書状集箱と書かれていた。
駅舎から出た右手はかなり広々としたアスファルトの敷地で その片隅に屋根つきで平屋の駐輪所が設けられてあり、 敷地のずっと奥には加太駅の駐輪所内にもあった自衛隊の宣伝看板が立っていた。 学生にあてた宣伝だろう。 敷地の国道に近い部分にはすぐに民家があって、 洗濯物なんかがよく見えてしまう状況であった。
駅舎から出て右手のようす。真中右寄りに見えるのは側線上にある車庫。
関駅駅舎?
関駅駅舎?
駅舎内に戻ると次ぎの列車は40分後だった。 この機会に関宿の町並みを見に行こうと思い、国道の歩道橋を渡った。
歩道橋から名古屋方面を望む。伊勢湾を越えて太平洋を望むにはまだ道半ば。
歩道橋からよく見えた一棟のマンションがとても気になった。 これから増えていくのかもしれない。 このマンションに住まう人は自動車で職場に行っているのだろうか。 それとも列車で向かっているのだろうか。駅前に一棟だけあるマンションだけに気になった。
歩道橋から鈴鹿峠方面を望む。
歩道橋から国道1号を見渡すと、とにかく大型トラックが多いことに気づく。 多い、というより、ほとんどが大型トラックだった。 こんなものがドルルルルルとうなりながら関駅駅前の交差点を通過してゆく。 静かな関宿はここより一本はずれて並行した道沿いに保存されているらしい。
歩道橋を下りる階段途中から見た駅舎と駅前。
ちょっと関宿へ
歩道橋を渡り終えて出た上り坂を直進する。 路面は既に土色になっていて、関宿が近いことを示していた。
関宿への道。
この道と直角に交わる関宿の通りに出るまでは一般的な住宅街になっているが、 駅から関宿へ行くにはよく利用される道なので、路面が土色に整備され、 地元の人が使うゴミ集積所には不法投棄を防ぐため太陽電池式の監視カメラをつけるなどしてあった。
ゴミ集積所。黄色の看板には「不法投棄禁止 監視カメラ作動中 亀山市 亀山警察署」と書かれてあった。
街区表示板。これは復元されたレトロではなく、本物。
関宿の通りと交わる交差点のずいぶん手前。右手にはシルバーゾーンの看板が見える。
関宿の風景。
鈴鹿峠方面を見て。
関宿に訪れたおばさんたち。
亀山方面を望む。
軒下で野菜を陳列して売っているお店。 近くにはとてもいいにおいが立ち込める蒸しパンのお店があった。
太秦映画村に行ったことがあった。 そこは関宿よりももっと本来の姿に近く町並みが再現されている。 しかし、この関宿の町並みの方がずっとリアルに感じたし、歩いていて楽しく感じた。 人が今でもここに生活を営んでいるというただそれだけのことが、 ここまで町をリアルにするのだということに気づいたのだった。 地元の人の生活の快適さと観光的な面での保存を両立したと言われる関宿。 それがなければこのリアリティはありえなかっただろうと思う。 完璧に再現するために住む人を追い払ってテーマパークのようにしても、 この関宿のようなリアルさや街歩きの楽しさというのは得られないのであった。
関宿の通りは駅から歩いて5,6分で着く。 下車した際にちょっと訪れてみるのもいいかもしれない。 ここ関町は宿場町としての役目を終えて通過点になった今、 旅人が必要に迫られて足を止めた街から、 新しい街づくりで人々がふと足を止める魅力的な町になっていたのであったのだから。
先ほどの交差点に戻って。
同じ道を駅へ帰っていくとき、左手に見つけた珍しいお店。
上のお店の敷地内にある自動販売機群。 色々な種類がある上にすべて100円だから、飲料調達はここがいいかもしれない。
駅へ帰還。
関駅前交差点。
駅へ着いて、20分ほど上り列車を待った。 もう人がしだいに集まり始めていて、 回廊下の椅子も所々埋められた。 日は差し込むのだが、冬の弱い光のため少しも暖かくない。 歩いてきたのに急に座ってしまったから、体の冷えも感じた。 長い間待ち続けて、ようやく気動車が到着。 着実に乗り込んで、出発。 次は終点の亀山だから、いったんホームへ降りることになる。
伊勢地方への小さな旅─冬編 その1 | 1(草津線に乗って加太駅へ) > 2(加太駅) > 3 > 4(亀山駅に降り立って)
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