松阪駅
冷たい風の中、六軒駅で4分遅れの列車を待ち続けた。
やって来た単行の気動車に乗り込むと、
その暖かさにはうれしくなるほどだった。
あいかわらず休耕田のただ中を走り続けたが、
しだいに建物が増えてき始めて、もうそろそろ着くんだろうな、と思った。
松阪市街である。
六軒駅から5分ほどで着いた。
曇り空だったが、賑わいのある駅だったおかげで、
予想していたとおり、まったく暗い気持ちにはならなかった。
4・5番線ホーム。
乗ってきた列車は松阪どまりだったが、 22分後に伊勢奥津行きとして運行されるため、 方向幕を変えて5番線に待機していた。 到着後しばらくは扉を閉め切って電気も消され、車内清掃や点検がなされていた。
5番線側の駅名標。名松線の駅「上ノ庄」が案内されている。
4番線側の風景。薄緑の柱が印象に残る。
4番線から見た改札口の風景。
4番線から多気方面を見て。 白っぽくに塗られた跨線橋は木造に見えた。 右手に映っているのは三交百貨店。
5番線側から見た近鉄側への連絡橋。
跨線橋・連絡橋への階段。 ホーム案内板がやけに小さかった。
4・5番線ホームの案内板。 跨線橋からホームへの案内板は、 津駅でも天井から吊り下げるタイプではなかった。
JR駅舎方向を見て。
跨線橋の、JR駅舎側の突き当りには、 三交百貨店へ直接入ることのできる有人改札があったが、 その廃業とともに改札口は鉄格子のシャッターが下ろされていた。 (三交は三重交通の略)。
小さいながらも電照式広告が連ねる跨線橋内。
反対側、近鉄ホームと近鉄駅舎への通路。
通路を進み、ホームへの下り口付近のようす。 2つの階段の間にはおいしそうな洋食屋さんがあった。
洋食屋を過ぎて、振り返って。 お昼前の静かな跨線橋だった。
階段を伊勢市方面側に下りて。 宇治山田・鳥羽・賢島方面の7・8番線ホーム。
振り返って。待合室や電照式時刻表など、一通りのものが揃っている。
跨線橋より名古屋方面側の風景。左に停車中の列車は急行名古屋行き。 このように一部、名古屋・伊勢中川行きの列車が入る。
自動販売機の近く。"SELF356"と名づけられて営業しているようだ。
少し歩いて7番線ホームを。両線に入った列車は少しも動かず、 まるで停滞しているかのようで、ホームからの風景は見えなくなった。
連なった一人掛けの椅子が並ぶホーム中央。椅子の背には赤福の広告が入っているものが多い。
こちらは6番線ホーム。片面ホームなのにコンビニや特急券うりばがあって賑やかだった。
たいへん長い木製の椅子。混んでなければ好きなように間隔をあけて座れるのがいい。
場所は変わって、JR線の2・3番線ホーム。普通列車のほかに「ワイドビュー南紀」が停車する。 右手は4・5番線ホーム、左手が1番線。
階段付近の2番線から見える1番線ホームのようす。 1番線ホームは1線分埋められてホーム幅が増やされているのがわかる。
3番線からみた跨線橋。白い跨線橋が古風だ。
多気側から跨線橋を見て。
多気方面を望む。
1番線の多気側終端。レンガ積みだった。
1番線階段下り口付近から見た跨線橋。 このとき、エレベーター設置の工事中であまり落ち着けなかった。
1番線から津方面に見て。向かいのホームとの間には1線しかなく、 1番線と2番線が共用になっている。
階段を下りて見えるホームの風景。
反対側から跨線橋の階段を望む。右手が改札口。
1番線ホーム津側から多気方面を見て。
ホームと駅名表のエコー。
改札口付近。自動改札が導入されている。
Kioskと改札口。Kioskの隣にある駅弁屋は改札内からも利用できる。
改札口を出て。コンコースから見た改札口。
Kiosk前付近から見たコンコース。駅舎内と外との間に扉がない。
駅舎出入口付近から見て左手にはJR東海ツアーズが入店していた。 きっぷによっては、みどりの窓口とそちらのどちらで買えばよいか迷う。
出入口から右手には近鉄のきっぷうりば。左手に汽笛屋。
駅舎内にはKiosk, 駅弁屋、汽笛屋の3つの店舗が入っていて、 旅道中にはちょうど良さそうな駅だった。 さて、駅そばを食べて温まろう、と汽笛屋に進んだが、定休日だった。 その分、駅前をいつもより少しだけ多く歩いてみようか、と思いコンコースを出た。
コンコースのほぼ全景。Kioskの左手は駅弁の「あら竹」。最高級の駅弁が売っている。
回廊屋根から駅舎入口付近。
駅から出ると回廊屋根が続く。右手はタクシーと一般車のロータリーだった。
屋根を越して左手の風景。バスターミナルになっている。 左手の建物は三交百貨店。
駅舎の軒下からバスターミナルの方向を望む。 軒は短く、雨のときには少し濡れそうだ。
この付近でうろうろしていると、テレビの収録でもするような大きな機材を抱えた人数人が、 近くのバンに乗り込んできた。 もしかして松阪牛を出すお店の取材でもしたのだろうか。
駅前の一角。一昔前の駅前の一部が、薄く平らなコンクリートの歩道に現れている。
松阪駅駅舎?
松阪駅駅舎?
駅前には大きな駅鈴のブロンズが設置されてあった。
駅前ロータリーのようす。
駅前の通り。
駅前からは、なんとも昔ながらの商店街がアーケードの下に軒を連ねていた。 空には電線が目立ち、交差点の形もいびつで、交通量も多かった。
通りの右側を歩いて。
歩道を歩いていると、右手にいくつか肉屋があった。 ある店のショーウィンドウでは、切り分ける前のサーロインの塊が展示され、 松阪牛を目当てに降り立った人の気持ちを満たしてくれる。
松阪シティホテル前。
長々と続くアーケード。多くの自動車が車道を走っていく。
途中、横断歩道を渡って、駅へ向った。
反対側の商店街のようす。
不思議なことに、こちら側の商店街の方にしっかりしている店が多かった。
交差点から駅舎を望む。
駅へ戻ったが、もう少し時間があった。 あとはゆっくりしようかと思ったが、 ここまで来たから近鉄側の駅舎の方にも行ってみようと思い、 地下道に入った。
地下道入口前からみた駅前の風景。左手に駅舎。
焦げ茶の屋根のあるところが松阪駅横断通路入口。
地下道内。
この地下道内を歩いているとき、ふと、 さっきの駅前には妙に動きがなかったことを思い出した。 お昼になったからだろうか、なんというか、人影がやたら少なく静かだったのだ。 たまに歩いている人を見かけると、どんな人なのか気になってしまうような雰囲気だ。思わず地下道を歩く足が速くなった。
地下道を出ると、人の居ない静かな細道に横から出た。 さっと右折して駅前広場に出た。右手に駅やロータリーがある。 しかしこちら側の駅前は明らかに裏手で、 幾台かのタクシーがロータリー中央部付近の専用スペースに常駐しているほかは、 たまに地元の人の送り向かいの自動車が発着するぐらいだった。
駅前広場から駅舎と反対方向を望む。 正面左の建物は「近鉄駅前駐車場」。
駅前広場から伸びる通り。反対側とは違って整然としていた。
戻って、近鉄側の駅前広場へ。
こちら側のロータリーも大きなもので、 中央は松の植えられた広い芝生の緑地帯になっていた。 しかし近鉄の駅舎は驚くほど簡素なもので、小屋にも等しいものだった。
近鉄松阪駅駅舎。
駅舎内のようす。
近鉄駅舎から出て、ロータリー中央部からみた駅前。
天気はこれから晴れていくようだった。 ここに着いてから、雲が徐々に少なくなっていくのを感じていた。午後から晴れということなのだろう。
近鉄の駅舎の近くを見回していると、 駅舎脇に行方不明人の看板が立っているのが、ふと目に入った。 その女性は、夜に会社から帰宅途中で行方不明になっているのだという。 さきほどの、人通りが急に少なくなったお昼前の駅前を思い出した。 襟巻きする季節だから妙に寂しく思われて、足早に地下道を抜け、 向こうから誰とも出会わないうちに駅の表へと出た。
あと10分ほどで、12時8分の多気方面行きの普通列車が来るという頃に、
再び駅構内へと入った。待合室に入らず、冷たい空気の中、ホームに立って待っていると、
一両の気動車があっけなく到着。思わず、
「えっ、これが多気方面行き?」
と感じた。とにかく方向幕を見てみようと思い、
列車の側面まで行って、あれ方向幕がないぞ、とわかったところで扉は閉じて列車は出発。
その瞬間に「しまった!」と思った。あれが乗る列車だったんだ、あれが…。
茫然としながらも、とにかくこれからどうするか考えないといけない、と思いながら、
駅の時刻表を見ると幸い27分後に「快速みえ」が来るとわかった。
ホームの椅子に座って、がっかりした気持ちを抑えつつ待っていると構内放送があり、
快速みえは9分遅れているとのことだった。
風が吹き、光が差し込んでくる中、
いすに座ったまま2・3番線ホーム越しに1番線の改札口を見ていると、
夏にこの駅に来たことがあったように錯覚した。
オレンジ色の入った駅名標が吊られた、薄緑の柱を持つ静かな上屋の向こうに、
駅舎内を通して、外の明るい風景が小さく見え、
風の吹くたびに、なにか風鈴でも鳴っているんじゃないだろうか、
と錯覚した。駅舎の外観には水色の線が入れられ、
全体的になんとも色とりどりであったのだ。
だが最も遠い季節が裏写しになったことで、時間の重苦しさを感じた。
でもこうして、気候だけが冬になったに過ぎないと感じられるなら、
まだいくらでも思い出を作り出せるということなのかもしれない。
列車は結局10分近く遅れた。 車両に乗り込んで着席すると、シートは快適で窓も大きく、 駅を離れていくのを見ていると、ああ、やっと立ち去れた、と感じた。 車掌が巡回しに来たとき、前の老夫婦が鳥羽へはいつ着くのかと尋ねた。 遅れているから、確認しなおしたかったのかもしれない。 車掌は説明の最後に帽子を取って軽く一礼し、立ち去った。
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