津駅
津駅構内の風景
「ご乗車ありがとうございました、つぅつぅつ。・・・・・・」
この放送が1番線に響き渡たったときは、とても驚いた。
「つ」ではなく「つぅ」。
う、がくっついている。
まさかこんなふうに母音を足して読まれるとは思ってもみなかったから、
これを聞いたときは体が固まってしまうほどだった。
なるほどこんなふうに二音節で読まれることもあるのか。
後日調べてみると、やはり津ではこのように二音節で読まれることが多いという。
しかし、この放送を聞いた直後からは、
この短い地名が特別に珍しく感じなくなり、このような地名も十分にあり得る気がした。
「き」の国と呼ばれた紀伊も、同じ例だろうと思った。
3番線から一身田方面を望む。
この津駅に降り立ってまず気づくのは、 この駅が近畿日本鉄道の津駅と隣り合わせであるということかもしれない。 JR線のホームからは、隣向こうにある近鉄のホームを見通すことができ、 そこでは長い編成の電車がかなり頻繁に発着し多くの旅客で賑わっているのが見えた。 名古屋から鳥羽まで、近鉄は複線電化。 JR線は、亀山から鳥羽まで単線非電化。 列車の来ない時間が長く、客足が途絶えてしまうからだろう、 賑やかな近鉄ホームを背景に、JR線のホームは閑散とした時間が長く続いた。 ただ、近鉄のホームは島式1つに対し、JRのホームは島式ひとつと片面1つだから、 JRのほうが客が分散しやすいのだが、それを斟酌しても、余りある少なさだった。
近鉄の電車が頻繁に発着するホームを背景として、 「津〜松阪間の通勤ならJRがおトクです。」 と書かれた派手で大きな広告看板が立っているのを見ると、 やはり私鉄との競争があるのだなと思われた。 看板には「お手元の定期券とお比べください!」とまで書いてあり、 必死なようすが伝わってくる。 「通勤なら・・・」と書いてあるから、昼間帯での勝負はあきらめたものの、 ラッシュ時には、安さをもって、まだ差をつける見込みがあるということなのだろうか。
3番線の端にある広告看板と駅名標。
駅名標の左横の「今日無事」と彫られた石。
2番線から3番線の端と近鉄の橋上駅を望む。
JR線のホームは後からかなり延長したらしく、 ホームの端付近は、薄いコンクリート板が柱で下から支えられた簡単なホームが続いており、 その下の部分には本来のホームの終わりを示すスロープが覗いていた。
2番線の駅名標。
1番線ホーム中ほどから3・4番線ホーム、近鉄ホームを見通して。
1番線ホーム中ほどから見た伊勢鉄道のりば。 1番線とされている。列車はあと7分後。
2番線に降り立ってあたりを見回したとき、 右手の方からビル群が目に入ってきた。 これを見たとき、やはり県都らしいなと感じた。 しかし、予備校や英会話学校の看板が目立っていたから、 学生が集まって来るところ、という感じもした。
2番線から阿漕・松阪駅方面を望む。 ここから見えるビル群が印象的。
JRの管理している東出口改札。右手に駅そばの「汽笛屋」
左手に折れると近鉄との連絡通路の階段へ。 一段おきに現れる「快速みえ」の宣伝がすごい。
右手に上ってきた階段、正面にCHUM(チャム)の有人改札。 左手には飲食店があった。
連絡通路内のようす。外観も内部も薄黄緑色に塗られている。 途中右手の階段を下りて3・4番線ホームへ。
3・4番線ホームの待合室前の風景?。
3・4番線ホームの待合室前の風景?。
4番線と近鉄線の境に立てられた広告。
3・4番線ホーム端のベンチ群と1番線伊勢鉄道のりば。
3・4番線ホーム終端旅情。一身田・亀山方面を望む。 舗装されていない部分の細かい砂が広がっている。
上の写真奥に見えている建物は津市の運営する「アスト津」。
3・4番線待合室付近から松阪方面を望む。
3・4番線ホームから連絡通路に戻り、近鉄の橋上コンコースに入った。 乗換改札はなく、直接近鉄の改札内に入ることができる。 近鉄のコンコースは、面積が広く、色はアイボリーを基調とされ、 天井からは自然の光が差込み、とても明るく活気のある雰囲気だった。 ホームとはエスカレータと階段、そしてエレベーターで結ばれていたが、 エスカレーターの側面に、つやのあるステンレスが用られていたことがとても印象的だった。 またコンコースには、割と敷地が広めのパン屋、小さなコンビニ、 この時には磯揚げの露店があり、休憩したり買い物したくなる雰囲気だった。 特に磯揚げの露店からは非常に香ばしいにおいが漂ってきて、 思わず店内を覗き込んでしまうぐらいだった。 官営の空気の漂う、必要な施設以外は特に何もない JR構内の駅中とはずいぶん違っている。
連絡通路を渡り終えかけて。
上の写真右手にある西出口改札。
JR構内への連絡通路の入口を振り返って。
コンコース内にある特急券回収箱。やけに大きい。しかも特急の塗装と同じ配色。
コンコース内全景。ホームへの下り口と西出口改札。
上の写真左手にあるトイレ。脇に花が生けられてある。
もう一つのホームへ下り口。右手に回り込むと先ほどのトイレがあり、左奥には長椅子の並べられた休憩所がしつらえてあった。
階段を降りて。JRの島式ホームよりも幅が広い。 この近鉄のホームには5・6番線が割り当てられている。
ごあんない、駅名標、乗換案内。
「ごあんない」には三重県庁、津市役所、県立博物館、県立美術館などが案内され、 官公庁街であることがわかる。繁華街は津新町駅からはじまっているから、 津駅前の賑わいがすなわち津市の主な賑わいとはならないのだろう。 今度来たときは、津新町を見てみたい。
JR駅構内との境には広告が立ち並ぶ。
JRのホームとは違って、近鉄のホームでは何かと大きな広告看板が目立った。 上の写真のように2つの構内どうしの境目にも立ち並んでいたし、 橋上コンコース下の、少し暗い空間にも電照式広告看板が並んで取り付けられていた。 それだけなら何とも思わなかったが、 近鉄のホームからしか見えない、JRのホームの上屋の梁にも、 電照式広告が並んで取り付けられているのを見たときは、 JR構内の広告がほとんどなかっただけに複雑な心境になってしまった。
特急の号車案内と駅の裏手の風景。 号車案内が特急の塗装に合わせてあり凝っている。
ステンレスの待合室前。 この奥にホーム上の小さなお店「ポケットプラット」がある。
6番線から江戸橋、名古屋方面を望む。
6番線、コンコース下付近。
コンコースから降りてくる階段とエスカレーター。
電照式時刻表。今ではホームに立てられる時刻表が主流のようだ。
5番線に入線してくる普通中川行き。
JRの改札を出て
JRの改札を出る前は、広めのコンコースや、 そこに入っているいろいろなテナント店舗を想像していたが、 改札を出てみると、コンコースは広々としたものではなく、すぐ外への扉があり、 中の店舗も2つで、全体的に、造りとしては標準的なもののような気がした。 コンコースにお店は少ないが、このビルの2,3階はCHUMの総合ビルになっていて、 そこでは喫茶、ファッションなどが楽しめるようになっており、 駅舎の外からの出入口として設けられたエスカレーター付近では人の出入りが結構あった。
東出口改札。
改札口の左手。
改札を左手にして。 この通路の左に沿ってみどりの窓口、近鉄きっぷうりばがある。
近鉄のきっぷうりば。通路が広くないこともあって、周りが少々混雑していた。
ここから先はCHUM(チャム)。奥にミスタードーナツの店舗が見える。
改札口前の扉から出て、左を見た風景。
右手にはタクシー乗り場が広がる。
右手にある百五銀行の建物とロータリー真中に造られた駐車場。
「津に来て 津を見て 津に惚れて」
駅前の屋根はこんなふうに埠頭のように突き出ている。 この先は地下道の入口。柱にはなぜか気象計があった。
左手の光景。こちらはバス専用のロータリーとなっている。
バス専用のロータリー。
さきほどの駅出入り口付近を見て。
駅出入口から正面を見て。
津駅駅舎。
ホテルサンルートをはじめ、多くのビジネスホテルが集まっている。
駅舎正面。
さきほど見た埠頭のような部分。左側が自動車、右側がバスのロータリー。
駅前の風景?
バスのりば。屋根にはわざわざ三角屋根が取り付けられていて、 変化をもたせてある。
駅前の風景?
駅から離れて。遠くにコンビナートが見え、ふと四日市のことを思い出す。
右手に折れた風景。
さらに右手に折れると、駅のすぐ前とは、打って変わったようにひと気がなくなり、 少し暗い雰囲気になったため、初めての私は、少し用心した。 日中でこの雰囲気なのだから、夜は歩きにくいかもしれない。 一人の女子高生がこのあたりでお迎えらしき電話をしていて、 なぜこんなところで電話しているのだろう、と思った。 駅前は混むから、この辺で迎えに来てもらうのだろうか。
駅の方向を背にして、 左に明星アカデミー、右にホテルエコノ津駅前。
ビルのために暗くなった道を駅方向に抜けて駅前でて、 近くにあった地下道の入口の階段を下った。 ここを通れば、横断歩道を使わずに駅前へ戻れるらしい。
地下道内のようす。照明が少なく、夜が不安だ。
駅のすぐ前に戻って、左手に折れる細い裏道に入り、 駅構内を広く跨ぐ陸橋の階段へ向かった。 裏道の左手には小さなラーメン屋や飲み屋があるが、 やはり人が少ない道だった。
跨線橋に上ってJR駅構内を見渡す。 連絡通路が近鉄コンコースとJR駅ビルを結んでいるのがよくわかる。 また、非電化なのに手前にトラス架線柱がある。
近鉄駅構内を見渡して。こちらは電化済み。
跨線橋を下りる前に近鉄駅前を見渡して。 正面の「津文化センター」は少し古い建物だった。
跨線橋から下りて。タクシーの並ぶ近鉄津駅前。
左手の風景。護国神社の林とバス停。 津西ハイタウン・つつじヶ丘へのバスが停まる。
バス停付近から見た近鉄津駅駅舎。
高いビルは津市運営の「アスト津」。
駅前から延びる道路から近鉄津駅前を望む。
橋上駅への階段の側面。街らしい軽いデザインで、国鉄のような重々しさはない。
近鉄津駅の前にある文化センターのすぐ前あたりは、 歩道も狭く、道路も広くなく、少し雑然とした感じだった。 駅階段の上り口のすぐ前では、コートを着込んだ女子高生が歳末の募金活動をしていて、 冬至らしい乾いた光の中、寒さに縮んだ声を張り出していた。
近鉄津駅前。
振り返って。
近鉄出札口。右手に改札口。
東出口改札。
ここにも天窓が付いていて明るい。
再びJRの改札まで戻るのに、 さっき渡ってきた跨線橋を再び利用するのはたいへんだな、と思いながら 近鉄のコンコースの外への階段を降りていると、 先の方に地下道の入口があった。 冷たい風から逃れ、そこに吸い込まれることにした。
地下道内のようす。JR駅前の地下道とはまた違う。
吸い込まれると感じたのは、地下道内が下り坂になっていたから。 JRの駅前にあった地下道より閉鎖的だが、明るく、人も2,3人ほど通っていた。
途中、跨線橋を渡る前に見たラーメン屋や飲み屋の入ったビルに つながる入口を発見。「味の名食街」の看板がなんともいえない。
JRの駅前に帰還してきた。駅舎内に入り、 次ぎの列車の時刻を見るとあと3分で、 あ、ちょうどいい、と思い改札内に入ったが、 それはワイドビュー南紀5号の列車だった。 いやな予感の中、調べてみると、普通列車は54分先。やってしまった。 しかし25分後に快速みえが来る。 でも快速は大きな駅ばかりに停車するので、 次に小さめの駅に行きたいと思っていた私は、乗らないことにしたのだった。 今思えば、当然のことながら快速みえに乗ればよかったと思う。 少し疲れていたのかもしれない。 はじめのうちはJRのホームで待っていたが、椅子も少なくお店もないので 近鉄のホームに移動して座って待った。 しかしそこは日陰とゆったりとした寒風が支配していて、 座っているうちに体の芯まで冷えてしまい、これではだめだと思って、 ホーム上にあるお店に入った。欲しいものを探したが、 パンやおにぎりはほとんど売れてしまっていた。 まだお昼の2時だというのに・・・よく売れるのだろうか。 とりあえず体が温まるようにと、温かいペットボトルのお茶だけを買って出ることにした。 ペットボトルをレジに差し出したときだった。
「このままでええかぁ。」
と言われ、これが津駅での二回目の驚きとなった。 何よりも関西の言い回しであるし、それにお店の人はふつうそんな言い方しないものだから。 そのときは思わず硬直して「はい」と言ってしまったけれども、 あのときは、
「うん、そのままでええよ、なあんもきぃつかうことあれへんがな。」
なんて言ってみてもよかったかもしれない。
「津って、関西の言葉に近かったんだな、遠くにきたつもりでいるけど、なんだかあまり地元から離れていないような気がする・・・。」 と感じたのであった。
日陰の近鉄ホームに居るのはやめて、日当たりのいいJRのホームへ移った。 きょうは冬至の二日前。太陽は遠いけれども、そのぶん光はやさしく、 それでもぬくもりがあったから、冷えた体を温めるにはよかった。 きょうは日が短いから、もう遠くへは行けない。 隣の駅を最後にして、帰途に就こう。 ようやく到着した列車に乗り込み、 短い時間ではあったが、再び列車に揺れに身を任せた。
伊勢地方への小さな旅─冬編 その1 |
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5(阿漕駅に降り立って:おわり)
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