Blotter
Windows XP 付属のオンラインゲーム ハーツとスペード
ハーツとスペード
かつてWindows XPにはハーツとスペードというカードゲームが付属していて、それがなんと世界の相手とオンラインで遊べるようになっていた。英語や中国語、ドイツ語、フランス語、それぞれのプレイヤーがOSの使用言語で表示され、国際的な雰囲気だった。アラビア語などマイナーな言語が表示されると新鮮だった。当時はこのゲームが楽しくて仕方なく、ストレス発散に昼夜問わずやりまくっていた記憶がある… 僕はめっぽう強かったので、さんざん対戦相手をやり込めるわけだ。そしてチャット機能で挑発的なメッセージを送る…といっても、チャットで送れる内容はプルダウンから選択するので、自分の考えて作ったメッセージが送れるわけではない。:-),:-(の顔文字や、あいさつ、ダブルニルですか?といったようなゲームに関するものなどしかないのだが、おぞましいほどの連投が可能で、これで高度なコミュニケーションを表現できるのであった。相手が怒ったときはたいてい:-(を連投するし、あるいは一回だけその顔文字を打ってすぐに退出する。あるいは逆に:-)を打った直後に退出したり、勝利目前でその顔文字を一つだけ送ったりする(ったく嫌味なものだ)。コミュニケーションの取りようはいくらでもあった。ルールを今詳しく思い出せないけど、こんなに楽しいのにほかの誰に聞いても興味を持たなかったのが不思議だった。それもそのはず、ほかの人は、こんなふうに人にマイナスポイントを食わしまくる陰湿極まりないカードゲームやコミュニケーションではなく、もっと本物の歓楽を必要としているのだった…
スペードというカードゲームでは、向かいの人とペアを組み、自分で決めたビット通りに取れれば高得点を取れるゲームだ。僕はめちゃめちゃ強かったので、何度もほかのペアを負かしたが、なぜか向かいの相手が不快を表して退出することがあった。よくわからないけど、ときどき負けたりして、本来は自由に言葉でコミュニケーションを楽しみながら行うゲーなのかもしれないとそのとき悟った。 というか、カードゲームというのは本来そういうものであろう。
ヤフーゲームについて
当時はヤフーゲームが隆盛を極め、レートを上げるのに熱中した人も多いではなかろうか。混雑する時間帯はなかなか入れず、待合室のようなところでチャットを楽しむしかなかった。こちらは自由に文章を送れ、もちろん対戦中もなのだが、すると当然ながら、とんでもないメッセージを送ってくる輩は絶えず、雰囲気はそんなに良くなかった。そういうのに反応せず粛々とゲームをたしなむ徳の高い紳士は一部の人たちだけである。いずれにせよ、今から考えると、何ともわくわくするような楽しい世界だ。ゲームの種類は無尽蔵で、ないものはないといっていいくらい。新しいゲームの発表も少なくなかった。
今は? すべてなくなって、砂漠と化してしまった。時代は変わり、スマホアプリで楽しむ時代になった。Java appletを使用したクソ重いブラウザゲームは塵芥に帰したのである。いずれにせよヤフーには相当技術力のあるSEが在籍していたことは当時誰もが確信していたことだった。入札の集中を裁くヤフーオークションのシステムもその技術力によって支えられてきたもので、そうした数々のwebサービスがヤフーのブランドを下支えしてきたわけだ。プロバイダーとしての販売力も営業力もあり、ネットでは数々のアミューズメントを提供する…いまだに多くの人がヤフーのトップページを開くのも、その時の影響力の名残かしれない。
気づくとネットはどこもかしこも公共事業のようになってしまった。当時の2ちゃんやゲームチャットの荒れようはひどいものだったが、世間ヅラしたつまんない人間の神経質なコメントがあふれるのもうんざりである。要はネットは虚構であるにもかかわらず、その虚構性を失ったが、人気があるのは今もなお、人間の内奥をリアルに表出させつづける人たちであり、我々はネットに現実空間にありがちな生真面目さなんて求めてやしないということは、今も昔もどうも変わらないことのようである。